「それだったら、かかった費用全部を計算し直して、資産に計上したらいいじゃないか」といった考えも浮かんでくることだろう。しかし、そうした会計処理は行わない。

1人の開発担当者が複数の研究開発を同時並行的に行っているケースがざらにある。また、研究開発には、企画、設計、試作、修正、認可、製品化などのプロセスがあり、何期にもわたることが珍しくない。そうしたなかから成功したプロジェクトのコストを切り出していくのは、会計の実務から見て大変困難であり、現実に即さないからだ。

こうした場合に特許権として資産に計上できるのは、特許権の出願料や登録費用など付随費用に関わる金額のみとなる。計上された特許権は、毎年一定額を一定期間にわたって償却する「定額法」で費用配分されていく。特許権の場合、その期間は8年間となっている。

これまで見てきたように、特許権をどのように取得したかで、資産計上する金額が大きく異なることに、読者の皆さんは違和感を覚えるかもしれない。

ここでは、自社で研究開発したものについては、その取得までに関わる金額の算定が実務上とても困難であり、経営者の“お手盛り”によって投資家に実体以上に見せるリスクを回避するためでもあることを理解しておいていただきたい。

ちなみに、日本の海外への特許出願である国際特許出願の件数を見ると、2012年は4万3656件で米国についで2位の“特許出願大国”となっている。しかし、そうした知的財産権を単に資産に計上しているだけでは、文字通り“宝の持ち腐れ”となってしまう。そこでどう活用して利益に結び付けていくのか、経営トップの手腕が問われることになる。

(構成=高橋晴美 図版作成=ライヴ・アート)
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