お客様が再び戻ってきたいと心から思うようになるには

問題がどんなに大きく複雑なものであれ、人任せにせず、お客様の立場に立って真摯に対応すれば、お客様との信頼をより深めることができる。シュルツさんはそう信じています。

シュルツさん自身も、半世紀を超えるホテル人生の中で、数多くの問題対応を行っています。ここに、そのひとつをご紹介します。

「ロンドンに住む、ある事業家のお客様から、『今週末ニューヨークに行く。妻が行きたいと言うのでね。ついてはホテルの予約をお願いしたい』と、ホテルに連絡がありした。そのお客様は、プライベートだけでなく、仕事でも会議を開くときに私たちのホテルを頻繁に利用して下さっていました。

ところが金曜日に、そのお客様がニューヨークに到着すると、ホテルには予約の記録がなかったのです。その日は満室で、お客様に泊まっていただくお部屋を用意することは不可能でした。

ホテルは、お客様のために別のホテルに予約をとりました。そして、そのホテルまでリムジンでお送りし、宿泊費用は私たちのホテルが負担しました。

週末が過ぎた火曜日、私はロンドンにあるお客様のオフィスへと飛び、花束を手に持って、お客様が現れるのを受付で待ち続けました。水曜日の朝、お客様が現れました。私はお客様に許しを乞いました。

この紳士は、私たちの最高のロイヤル・カスタマーのひとりになりました」

シュルツさんにとって、お客様との間に問題が生じた場合、誠実に謝罪の言葉を伝えるだけでは、対応をしたことにはなりません。お客様が対応に満足しても、まだ対応は終わっていません。お客様が、再びホテルに戻ってきたいと心から思うようになるまで、お客様からの信頼を取り戻すまでは、問題はまだ解決していないのです。

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