国は、フロンティア分科会を<国際的・社会的環境が大きく変化すると予想される2025年に向けた方向性を検討>するところとしている。しかし、柳川教授は「そんなに先送りできる話でもない」と言う。また、「40歳定年制」は、「部会報告書が注目されるように、タイトルとして狙った面がある」とのことだ。世間の危機感をあえて煽る尖った経済学者。その考え方の筋道を追うと次のようになる。
これから日本の人口は確実に減り続ける。国は少子化対策に取り組んでいるが、出生率の上昇が人口増に結びつくには20年以上かかる。人口減少社会では、今の社会保障は成り立たない。日本の社会保障は、高齢世代を現役世代が支える仕組みで、10年現在では高齢者1人に対して現役世代2.6人の負担だったのが、60年には高齢者1人に対して現役世代1.2人となるからだ。このままでは、日本社会はいずれ立ちゆかなくなる。
危機を回避するには、一人ひとりの生産性を高める必要がある。そのためには新しいチャレンジや魅力的な創意工夫を活発に行う人材を増やすことが欠かせない。新卒採用された会社で働き続けることが「ノーマル」で、それ以外の働き方は「アブノーマル」という風潮は改めなくてはいけない。
働く人が能力をリニューアルできる環境を整え、会社にしがみつかずにすむ社会を実現させる。そのためのアイデアのひとつが「40歳定年制」なのだ。それはもちろん、40歳での強制的なリタイアを意味しない。定年後は「学び直し」の機会を得て新たな職場に移籍、もしくは同じ職場で再度雇用契約を結ぶことができるし、長期有期雇用にすれば入社時から65歳まで働き続けられる――。
以上、概要はこんなところである。つまりは、終身雇用の限界を指摘し、働き方の多様化を訴えている。
言葉遣いとしての「40歳定年制」は大胆不敵だが、そこに至るまでの考え方は真っ当ではないだろうか。