そもそも終身雇用が実施されているといえるのは、大手メーカーなど一部の大企業にすぎない。柳川教授も部会報告書について、「書いてあることは、国のあり方を考えてきた人たちの間では周知に近い、わかりきっている話がほとんど」と言う。
ただ、この部会報告書が提言する「学び直し」は、いまひとつピンとこない。40歳の定年退職者に誰が何を教えれば、次の職につながる学びとなるか。柳川教授はひとつの例を挙げる。
「それは社内教育の外出しです。バブル崩壊以降、企業内での教育投資は10分の1になったとの調査結果もあります。その代替として、大学が各業種の技能経験者を雇い、専門トレーニングの総合講座を設置します。1、2年間は専念できるカリキュラムがいいでしょう。そこで受講生は、自分の再就職に必要な技能や知識を得ます。講師は、卒業生がどれだけ就職できたかで評価されます。成果主義を導入して、真剣な学びの場をつくり出すのです」
なるほど、それは大学の生涯学習として新味のあるコンセプトだ。でも、そこで行われる専門トレーニングはどんな内容なのだろう。正直なところ、具体的にイメージしようとするほど輪郭がぼやけてくる。
実業の世界を知るプロの目には、この社内教育の外出し構想はどう映るのか。人事コンサルタントの深田和範氏は語る。
「たしかに会社の教育投資は激減しています。理由のひとつはコストカットですが、もうひとつは会社がどんな人材を育成したいのか、わからなくなっているからです。将来、どんなスキルが必要になるか、会社にも見通せない。だからこういう人材になってくれと、会社が自信を持って示せないのです」