「セリフ」を練り上げる時間がない経営トップは、どうしているのだろうか。
LINEの森川亮社長のポリシーは「ウソは交えず、事実を書く」ということだ。
「断るときに本当の理由を伝えずに方便を使う人がいますけど、僕みたいなタイプがそれをやると、すぐバレてしまいます(笑)。たとえばダブルブッキングがあって、一方をキャンセルするときに『風邪をひいたので残念ですが欠席します』と書いたとしましょう。でも、そのときに別のところへ行っていたことがバレたらどうですか。傷つけたくないからといって事実を曲げて伝えると、事実がわかったときによけい相手を傷つけます。だから、たとえ嫌がられる理由であっても、事実を伝えたほうがいいですね。もし悪影響が出そうなら、そのことへのケアを考えるべきです」
もちろん、「事実」の伝え方はさまざまだ。森川氏は「その事実のいい面を強調するようにしています」という。そして、こんなたとえ話をしてくれた。
やむをえない事情から、グループで山に行く計画が海に行く計画に変わってしまった。山登りを楽しみにしていたメンバーに、予定変更を伝えるときどうするか。
「山に行きたかったのに残念だというのではなく『この時期はやっぱり山よりも海に行くのが楽しいよ』というストーリーを組み立てる。そうやって前向きの空気をつくっていくのが大事だと思います」
(小原孝博=撮影)