新しい市民協働プロジェクト、始動
――この4月からは、市民参加型の新しい町づくりの取り組みとして、課員が全員女子高生で構成される「鯖江市役所JK課」(福井県)がスタートします。これも若新さんが仕掛けられたそうですね。
これもNEET株式会社と同様、抜本的な組織システムの改革を目的とした実験的プロジェクトです。これまで地方自治体の仕事は、国によって定められた仕事がほとんどでしたが、近年は地方主導の独自事業が増える傾向にあり、鯖江市の場合は後者の数の方が多いのです。つまり、市役所の窓口業務やインフラ維持の仕事だけでなく、地元視点を取り入れた独自の地域活性化事業などが増えているのです。
そうなると、地方公務員の仕事のやり方も変わってくるはずです。新しい公共サービスのあり方を模索するのが、このJK課の取り組みです。
――そこで白羽の矢を立てたのが、女子高校生だったというわけですね。
そうです。鯖江市はもともと市民との協働による町づくりに取り組んでいて、市民の主体的な参画を促す「市民主役条例」が制定されています。とはいえ、町おこしに興味のある大人や、町おこしについて専門知識のある大人――僕は「プロ市民」と呼んでいますが――そういう大人ばかりが集まっても、新陳代謝は起こらないし、活動自体が閉鎖的になりがちです。
だから僕は、市役所からもっとも遠い存在でありながら、市民として影響力のある人たちを突破口にしたかった。そのような存在は、女子高生以外には考えられません。僕は彼女たちを「ゆるい市民」と呼んでいるのですが、その女子高生たちが「主役」になることで、激的な変化や広がりの渦を起こすことが目的です。これには牧野百男・鯖江市長も理解を示し、「ぜひやりましょう」と言ってくれました。
――全国的に見ても先進的な取り組みですね。具体的にはどんな活動をしていくのですか。
JK課ができたことで、鯖江市の職員はもちろん、地元のベンチャー企業や、大学の先生、学生、市民団体、地元のデザイナーなど、多様な市民が関わってくれています。そして、色々なコラボレーションが生まれようとしています。現在、地元企業と組んだ商品開発やイベントの開催、女子高生が自分たちの視点でレポートするネット放送局などを企画中です。もちろん色々トラブルや課題が生じると思います。そうしたら、大人たちが振り回されつつもサポートし、さらに活動の輪が広がっていく。新しい組織のあり方です。
もちろん、「そんなやり方がうまくいくのか」という懐疑的な声があるのも事実です。しかし、「過去の成功体験に縛られるな」とか、「創造的破壊が必要だ」とか総論では賛成しながらも、前例のないことには各論で反対してダイナミックな改革が起きづらい社会だと思います。
そうではなく、総論に賛成なら、多少の反対や「怪しい」という批判があろうとも思い切ってやり進めるのが僕の仕事だと思っています。それができるのは、反対意見や批判以上に、これらの取り組みの意図や目的に賛同し、「魅力的で面白い」と仲間に加わってくれたり、応援してくれたりする人がいるからです。そうした応援や協力は、僕にとってかけがえのないものであり、活動の原動力になっています。