釣りや昆虫採集を勧めるワケ
【山根】天野さんは南海トラフ地震のような大きな災害が来たらどう生きていけばいいと思いますか?
【天野】世界中でそういう災害が起きているでしょ。どんな国でもお父さんお母さんは自分よりも子どものために行動しますよね。だから、普段から子どもたちを少しだけ賢く動けるようにしてあげたい。もしひとりになっても生きていけるように。そういう意味もあって、子どもたちのためのイベントもやっているわけです。今日の養老先生との虫採りイベントも、近隣の小中学校や、全国各地からの親子が合わせて200人くらい集まります。
【山根】釣りや昆虫採集をしていると、自然界がどんなに過酷かが子どもにもわかると思います。今はそういう経験ができる機会も少ないですしね。子どものうちに経験しておくべき思わぬ危険も、怪我させないようにと常に大人が先回りして取り除いている。
「予測できる」という勘違い
【養老】自分に起きる出来事をすべて予測できるって信じ込んでしまう。それでこんな世の中になっているんです。問題を指摘すると「じゃあどうしたらいいんですか」という質問が来る。「お前さんのその考え方がダメなんだよ」と言いたいんだけど。「こうしてみたら」と提案すると「そうしたらどうなりますか」と返ってくる。やってみなければわからないと言うと「そんな無責任な」と言われる。結果が読めなければ「無責任」なんです。「ああすればこうなる」という予測が成り立てば行動する、というパターンが体に染みついてしまっていて、変えられないんです。
【山根】人間がほとんど万能だと思い込んでいると。
【養老】AIが人の予測能力を超えるとかいうのもそれで、まあ、超えるかもしれませんけど、そもそも人間の能力を誰がどうやって測ったんだと聞きたい。戦時中の無敵皇軍の考えと同じですよ。世界中の軍隊と同じ条件で戦ったわけじゃないのに、なんで一番強いってわかるんだよと。僕が育ったころ、そういう質問を誰もしなかった。したらボコボコに殴られたに違いないんだけど。でも、今の日本の現場もそういうところがありますから、注意しないといけない。
【山根】地震や自然は予測できないものですからね。
【養老】「ああすればこうなる」というシミュレーションは意識の世界です。でも虫は意識の世界の外にある。
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