豪州では「子どものSNS禁止」

【養老】SNSが問題なのはそこなんですよね。あれもやっぱり「人の世界」ですから。書き込みも全部人がやっていることで、そこに時間を使いすぎるのはよくない。オーストラリアで子どものSNS利用が法規制されたというニュースがありましたが、日本のメディアはその報道が一切ない。なぜオーストラリアの国民がそういう選択をしたのかという解説がまったくないんです。だからそれを自分の常識で考えるしかなくなる。自分の常識は日本でできた常識ですね。そうすると別にスマホ見てたっていいじゃないのって話になるに違いないんですよ。

僕はオーストラリアに行ったことあるから関心があって見ているんですが、オーストラリアは国土の大半が砂漠で、車が故障したら本当に死にかねない国です。うっかり砂漠に出て行って、頼りになるのは自分の体力と判断力だけ。それと似た環境で起きたバスの事故で、サハラ砂漠でバスが故障して飲み水が無くなり、40人以上が亡くなったというニュースがありました。その中で2人だけ歩いて脱出した人が、一番近くの集落にたどり着いて助かった。そういうことが起きうるのを、オーストラリアでは国民全体が了解していますから、スマホばかり見ていたんじゃ生きていけないということがはっきりとわかっている。

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写真=iStock.com/hapabapa
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物流が止まったらどうするのか

【山根】日本にはそんな場所はないですからね。

【養老】そうなんですよ。人に頼れば済んでしまう。今日、宿からここへ来るときも小学生の通学路に見回りのお巡りさんがいたけど、ちゃんと見ててくれるでしょう。それが世界中で普通だと思ったらいけないんだ。

【山根】それにつながる課題意識として、養老さんはよく南海トラフ地震のお話をされますね。

【養老】地震自体を問題にしているわけではなくて、その後どういう社会を作るっていう目標があるのか? っていうことなんです。道路が穴だらけになって、流通が止まる。食料自給率が低い日本ですから、食料を運んでこなければならない。物流が止まったら、みんなどうするのか。しかもこの天候不順で。気候変動は世界中の問題ですね。それで地震が起きたら方丈記の世界みたいになってしまう。スマホがなければ生きていけないと思っている若い人は、電力の供給がどこまで保証されるかを考えたことがあるのかって。今はまだ自分に関係ないと済ませてしまっている。