我々の海外でのマーケティング活動が本格的に始まったのは1957年、アメリカ・サンフランシスコに販売会社を設立してからだ。今でこそ営業利益の6割を海外市場で挙げているが、当初は醤油とはほとんど無縁の土地での新規開拓である。まさに自ら顧客をつくり出す必要があった。アメリカのスーパーマーケットに醤油を置いてもらうのにも苦労したし、そこで売り上げを維持していくのも大変だった。1週間ごとの売り上げが低ければ、即座に「いらない」といわれてしまうからだ。

我々がやったのはインストア・デモンストレーション。法被(はっぴ)姿でスーパーの店頭に立ち、七輪のような電熱器で醤油に浸した肉を焼いて楊枝に刺し、お客様に試食してもらうのだ。「天然の大豆・小麦を発酵させてつくった調味料です。おいしかったら買ってください」と勧めていく。

(総括、分析・解説=楠木 建 構成=小川 剛 撮影=的野弘路)
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