民主党の経済政策の評価が不当に低いと考えるワケ

アメリカの党大会は共和党も民主党も、色とりどりの風船が舞い、華やかな雰囲気に包まれる。とくに、8月にシカゴで行われた民主党の大会では、大統領候補カマラ・ハリスと副大統領候補ティム・ウォルズが演壇でダンスを踊るような動きを披露していて、まるでバレエの舞台を見ているようだった。

6月末に行われた最初の候補者討論の後、世論調査ではドナルド・トランプ前大統領がジョー・バイデン大統領をリードしていた。しかし、7月下旬に、バイデンは高齢を理由に候補を辞退するという歴史的な決断をし、カマラ・ハリス副大統領に民主党の候補者を譲った。本稿を執筆している時点では、ハリスとトランプの支持率は伯仲しているが、9月10日のテレビ討論会がハリスに有利に働きそうだとの観測もある。

政治経済学者として米国大統領選挙を見て感じたことを述べていきたい。国民の多くは、トランプが実業家だという理由で、彼は経済に明るいという印象を持っているが、これは正しくない。

たしかに、彼はフロリダ州のマール・ア・ラーゴや多くの場所にゴルフ場を所有しているし、イーロン・マスクのような億万長者の友人もいる。しかし、それは彼が経済メカニズムをよく理解している証拠にはならない。トランプは親から受け継いだ資産でビジネスを始めたが、何度も破産を経験している。破産処理や納税を回避するため法廷で争うことも多い。トランプがビジネスの才覚を持っているかどうかは疑わしいのだ。

経済政策を見てみよう。トランプ前大統領が軽視して蔓延したともいえるコロナ禍の影響を引き継いだが、バイデン現大統領は真剣に対処した。疫病で働く場のなくなった国民を金融緩和と財政支出で救ったのである。

ただ、トランプが富裕層への減税を大幅に行った後だったため、コロナへの緊急対策が一時インフレを引き起こした。しかし、いまやアメリカ経済はコロナ禍から回復を遂げ、インフレ率も2%台に沈静しつつある。任期中の景気調整については、バイデンは歴代の大統領の中でも抜群に好成績を示しているのである。

ただし、人々はインフレ率をいつも正確に記憶しているわけではない。政府や学者はインフレ率が下がったことを強調するが、一般の人々が気にするのはコロナ前と比べてスーパーの食品やガソリンの価格がどうなったかだ。インフレ率、失業率、株式価格など、経済指標がいい状況なのに、民主党政権は不当な評価を受けているのである。

民主党の大統領候補となったハリス副大統領(右)。支持率ではトランプ前大統領。
民主党の大統領候補となったハリス副大統領(右)。支持率ではトランプ前大統領。

米国大統領選は世界の民主主義の未来を問う

さて、アメリカ合衆国の開拓は、先住民のアメリカ・インディアンを迫害した移民の労働で行われた。したがって、移民と人種問題はアメリカの歴史の根底にある。移民なしにアメリカは存在しえない。公民権運動は少数民族の状況を大きく改善したが、いまでも一部の人が、白人が支配していた過去に戻りたいと思うのも理解できる。

多くの人が銃によって命を失っているにもかかわらず銃規制が成立しないのも、銃が白人支配を維持する手段となっているからであろう。友人のアメリカ研究者である(元共同通信の)故・松尾文夫氏が述べたように、占領体験から日本人はアメリカを単に民主主義の国だと思っているが、実は怖いところもある「銃を持つ民主主義」なのだ。

共和党がこうした白人層を代表していると考えれば、その税制や経済政策、移民政策をよく理解できる。ある意味で、トランプは人種差別社会を復活させようとする人々を代表し、またそれに利用されているのだ。

(文=浜田宏一 撮影=石橋素幸 写真=時事通信フォト)

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