医師の「アドボケイト」が子どもの命を救う

アドボケイトという言葉をご存じでしょうか。一般にはあまり使いませんから、初めて耳にする、という方も多いかもしれません。アドボケイトとは、英語ではadvocateと書き、「主張する」「弁護する」という他動詞、または「擁護者」「仲介者」「弁護士」という名詞として使われます。

私たちが暮らす社会は、本来であれば、誰もが尊い存在です。個人の持つ権利が他者によって不当に侵害された場合には、当然、それを訴える権利があります。しかし現実には、自分に対する権利侵害を自ら訴えることができない人たちがいます。あるいは、自分を守りたくても守れない人たちがいます。たとえば、配偶者からDVを受けている人、親から虐待を受けている子どもなどは、助けを求めたくてもそれができない状況に置かれています。

そうした弱い立場の人たちの代わりに声を上げ、擁護する行為――それがアドボケイトです。

アドボケイトは狭義には「弁護士」を意味しますが、広い意味では法律の専門家に限らず、広く「代弁者」「擁護者」を指します。そのなかには医師も含まれます。

小児科医は積極的に取り組んでいる

現在、医師のなかで最も積極的にアドボケイトに取り組んでいるのは小児科医たちです。理由は明白で、児童虐待の問題があるからです。児童虐待の最初の発見者は、しばしば小児科医です。

井原裕『精神科医が発達障害・いじめ・不登校に悩む親に伝えたい わが子のこころの見守りかた』(ウェッジ)
井原裕『精神科医が発達障害・いじめ・不登校に悩む親に伝えたい わが子のこころの見守りかた』(ウェッジ)

日本小児科学会は、「小児科医は子どものアドボケイトである」と明確に示しており、それを専門医の到達目標の一つに掲げています。そのため、小児科医たちは「困っている子どもたちを守ることが自分たちの使命である」という自覚を持って日々の診療にあたっています。

一方、精神科医はどうでしょうか。

残念ながら、アドボケイトとしての自覚を強く持つ精神科医はまだ多くはありません。なかには「弁護士のまねごとをするべきではない」と考える人もいます。

しかし、私はそうは思いません。患者の生命を守ることこそが医師の使命だからです。

だからこそ、医師という立場を用いて、断固としていじめをやめさせなければならないと考えます。そのための絶対的な切り札となるのが、「いじめ防止対策推進法」に基づいた内容の医師の診断書です。

精神科医から一言:子どもを救えるかどうかは、1枚の診断書にかかっている。アドボケイトに理解がある医師に出会えるかがカギ。
(構成=石渡真由美)

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