アベノミクスの一翼を担う日本銀行の黒田東彦総裁と岩田規久男副総裁は「2年以内に消費者物価を2%に引き上げる」との目標を掲げ、そのためには「あらゆる手段を講じていく」として、大胆な金融緩和に踏み切る姿勢を示している。市中に出回るお金が増えれば円の価値は下がる。12年12月26日の安倍晋三政権発足以降、為替相場は1ドル=85円台から100円台へと急激な円安に振れている。

それを受けて始まったのが輸入品値上げの“ドミノ現象”だ。高級輸入車の「ポルシェ」が13年1月から約30万~40万円の値上げを行った。続いてフランスの高級ブランド「ルイ・ヴィトン」が13年2月15日からバッグや財布などの価格を平均12%引き上げた。さらに「シャネル」も、13年3月1日から時計や宝飾品の日本での販売価格を約5~6%上げた。

こうした動きは、輸入品を原材料にする食料品や日用品にまで波及し始めた。日清オイリオグループは、13年4月1日の納入分からサラダ油をはじめとする食用油で、メーカー希望小売価格を1割以上値上げした。また、農林水産省は13年4月から輸入小麦の政府売り渡し価格を平均で9.7%引き上げている。このほかトイレットペーパーや缶詰などの値上げも発表され、少しずつ一般家庭の家計に重くのしかかる。

では、黒田総裁がいうように消費者物価が2%にすんなりアップするのかというと、簡単でもなさそうだ。第一生命経済研究所の首席エコノミストの熊野英生さんは次のように分析する。

「円安の振れ幅から見ると、輸入物価はまだ上昇する余地があって、消費者物価が1%に近づくことはありえるでしょう。しかし、2%になるかというと、かなり難しいといわざるをえません。物価に占めるウエートの大きい電化製品は、5年で半額というような値下がり傾向に歯止めがかかっておらず、物価押し上げの面での足かせになる可能性が高いからです」