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図7 機械的に計算すると累計11%も上昇する消費者物価

さらに熊野さんは、黒田総裁が消費者物価2%の上昇に消費税の引き上げ分は含まないとしている点に注目している。実際に達成した場合は14年4月以降に極めて大きな物価上昇になってしまうからだ(図7参照)。

「14年3月時点の生鮮食品を除いた消費者物価の指数を100として、消費税の引き上げ分がフルに転嫁されたと仮定したら、14年4月には103になります。そして、目標である2年後の15年4月には2%上昇なので105になるわけです。さらに2%の物価上昇が続くと、半年後の15年10月には1%の上昇と消費税の引き上げ分を加えて108になり、後は機械的に16年10月が110、17年4月には111という計算になります」

正確にいうと非課税品目があるために、消費税が5%上がっても消費者物価は3.8%の上昇にとどまり、17年4月までの累計では11%ではなくプラス10%になるそうだ。それでもすさまじい数字で、熊野さんは「日本の物価上昇率が3年間でプラス10%以上になった時期は、第二次オイルショックの直後の83年までさかのぼらなければ見つかりません。計画の意気込みは買うにしても、実現は難しいでしょう」と指摘する。

また、年金や医療など社会保障の面からアベノミクスに懐疑的な見方を示しているのが社会保険労務士の北村庄吾さんだ。

「物価が上昇していくのには消費にお金が回る必要があります。しかし、税金や社会保障の負担増で極端な話、給与から天引きされた後の手取りが4割という時代がやってくるかもしれない。そうしたことを薄々感じとっているので、現役世代はお金をつかうことができないのです。引退世代も先々のことを考えたら、余分な出費は避けたいところでしょう。デフレ脱却を掲げたアベノミクスが成功するかどうか、私は疑問に思えてなりません」

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