太平洋を共に守るという戦略的追い風
ほかにも、ヨーロッパ勢との違いでは艦艇の運用思想が見逃せない。オーストラリアは西にインド洋、北と東に太平洋を抱え、海軍は長距離・長期間を前提に艦艇を運用しなければならない。
その条件は、海に囲まれた日本も同じだ。新型FFMは寄港しなくても長く航行できるよう低燃費化。ヨーロッパ勢に比べ長大な航続距離は、オーストラリア海軍には魅力的に映ったはずだ。
太平洋・インド洋を中心に活動する海軍として、アメリカ太平洋艦隊の存在も無視できない。同じ海域で活動することもあって、米豪の両海軍は装備やシステムに共通するものが多い。米海軍との親和性の高さは海上自衛隊も同じ。日米豪が一体となって太平洋の安全保障を支えるという戦略上の理由からも、日本には追い風が吹いていた。
「日豪で共通の装備体系を持てば、日本の新型FFMがオーストラリアのドックで装備の修理を受けたり、逆にオーストラリアのフリゲートが日本で修理することも容易になるでしょう。オーストラリア海軍もそのメリットは理解していたと思います」
防衛装備移転三原則改正でさらに高まる商機
今回のオーストラリア政府による新型FFM採用は、日本にとって太平洋の安全保障強化につながる朗報だった。ただ、日本のメリットは、直接的な防衛力向上だけではない。海上自衛隊の装備を現場そして開発側から長年見てきた佐々木海将補は、今回の採用をこう評価した。
「日本の防衛産業は生産ラインの維持に苦労していました。生産ラインが維持できなくなると、技術者が他の産業――とくに民需に流出します。民需は量産を目指すので、ゲームチェンジャーになる尖った技術は官が支えなくてはならないのですが、海上自衛隊も予算に限りがあって、これまでは優秀な技術者が次々に民需に流れていく実態がありました。
艦艇は建造に関わる会社や技術者がとても多い事業で、1隻売れただけでもインパクトが大きい。今回の新型FFM移転を機に、尖った研究開発を維持して官民のデュアルユースで展開できるようになれば、日本経済の活性化にもつながります。実際、防衛産業や経済界を見ているとその雰囲気を感じます」
日豪両防衛相による「もがみメモランダム」署名の3日後、高市政権は「防衛装備移転三原則」と運用指針を改正して、これまで移転を限定的に認めてきた5類型(救難、輸送、警戒、監視、掃海)を撤廃した。移転協定を結んだ国が対象という条件はつくものの、殺傷能力のある装備も移転できるようになり、日本の防衛産業が世界で活躍するチャンスは増える。今回の新型FFM移転は、この流れに弾みをつけそうだ。
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