辞任を決めた後に首相の仕事ぶりが伝わる

石破茂首相が辞任を表明した。個人的な気持ちを言わせてもらえば、非常に残念である。菅義偉元首相も、岸田文雄前首相もそうだったが、首相自身の失点というよりは、自民党への逆風で辞任を選択せざるをえなかった。そして、辞めた後になって、「実はいい仕事をしていた」と評価されるという流れが続いている。辞めると決めた後で、国民に首相の本当の仕事ぶりが伝わるというのは、内閣の情報発信とマスコミの取り上げ方の双方に問題があるのではないかと思っている。

石破首相の場合は、参議院選挙の後も本人が続投へ意欲を見せていたこともあり、SNS上で「石破辞めるな」といった運動が盛り上がったり、世論調査で「辞める必要はない」といった声が増えたりした。党内で石破首相を支持する陣営からは「世論は続投を支持している」といった意見が出ていたが、もともと有権者が続投を支持していたのなら、選挙で負けないように自民党に投票すればよかったのである。

菅元首相と岸田前首相は、支持率が低迷して総裁選への出馬を断念したが、一方で石破首相は、選挙の顔として期待されたにもかかわらず、国政選挙で2連敗し、衆参両院で少数与党に追い込まれてしまった。この結果だけを見れば、厳しい意見があっても仕方がない。だから、国民の皆さんも、選挙後にネット上で「辞めるな」というくらいなら、きちんと投票先を選んでほしかった。

次の自民党総裁、そして内閣総理大臣が誰になろうと、石破首相が成し遂げられなかった「地方創生」の政策は引き継いでもらいたい。

いま、地方は危機に瀕している。地方行政の財源は、自治体が独自に集める自主財源と、国からの地方交付税に分けられる。自主財源では、固定資産税が大きな位置を占めるが、これがどんどん減っている。地方から大都市に人口が流出するから、納税者が減少して、税収も減るのである。それに地価の低下が拍車をかける。税収が減った自治体は、国からの地方交付税に依存することになるから、国の財政も圧迫する。地方の危機が、国全体の危機につながるのだ。

こうした流れを断ち切ろうとしたのが、菅元首相が総務大臣のときに導入した「ふるさと納税」の制度である。都会に出てきた人々の故郷への納税を寄付金控除の対象とすることで、地方の税収増を狙う制度だった。それが、想定していなかった返礼品システムの過熱で、当初の狙いがぼやけて、いまでは、地域の名物の格安通信販売の様相を呈している。大阪府泉佐野市のギフト券が問題になったことはよく知られているが、私のふるさと長野県辰野町でも、町内に工場があるオリンパスのカメラを返礼品にしていたら、指導を受けてしまった。ほかの自治体でも、あまりに高額なものや、その自治体との関係が薄いものが続出したため、現在は、返礼品のルールが整備され、返礼品の価値も経費を含めて寄付額の5割以内と厳格に定められた。

返礼品をめぐる問題は、かなり改善されたとは思うが、結局、目玉となるような返礼品を生産する企業や、ふるさと納税に注力できる人員を持った地域に寄付が集中するという状況はかわっていない。名物や人員がない地域の財政は厳しいまままである。

私は、地方創生のために返礼品の廃止を提案したい。返礼品で寄付を集めるのではなく、税制の優遇で寄付を集める形にしてはどうだろうか。現在の寄付による控除だけでなく、ある程度の金額を寄付すると税率も下がるようにできれば、地方出身者による、自分の故郷への「ふるさと納税」がもっと、進むはずである。これなら、特定の地域に寄付が偏らない。大都市で働く地方出身者も地元とのつながりを強く意識できるだろう。

地方への再分配に抜本的改革を

そして、地方創生の切り札として注目されている「スマートシティ」だが、長野県伊那市の事例をのぞいて、成果がよくわからない。トヨタやパナソニックなどの大企業が主体となって進めている場所もあるが、いきなり最先端の技術を導入するより、実際に暮らす住民が使いやすいレベルから入ったほうが、効果が出やすいと考えている。

伊那市は、地元のケーブルテレビのシステムを活用したことで、高齢者が簡単にスマートシティならではのサービスを受けられるようになった。いまでは、訪問看護師が高齢者の自宅をまわりながら、高齢の患者と病院をビデオ通話でつなぐリモート診察を実現している。医師不足と高齢化が同時進行する地方において、遠隔医療の重要性は増している。リモート診察であれば、地元のかかりつけ医と他地域の専門医との連携もスムーズにできる。全国でこのようなサービスが実現できれば、地方も元気が出てくるだろう。

(写真=PIXTA)

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