ポスト石破はなぜ動かないのか

私がこの原稿を執筆している9月初旬、自民党はようやく参院選総括の取りまとめを発表した。森山裕幹事長、小野寺五典政務調査会長、鈴木俊一総務会長、木原誠二選挙対策委員長の党四役は、参院選で敗北した責任を取るとして、そろって辞任の意向を表明したが、石破茂首相自身は進退についての明言を避けている。石破おろしの動きはくすぶっているものの、現時点では、全党的な広がりには至っておらず、臨時の総裁選が実施されるかはまったくわからない状態だ。

一方、8月中に行われた報道各社の世論調査では、石破内閣の支持率が30%台半ばに回復するとともに、過半数が石破首相の続投を支持するという結果が相次いだ。石破内閣は、安定した低空飛行という奇妙な状態で落ち着いている。

私の正直な気持ちをいえば、石破首相に続投してもらいたい。愛煙家というところに共感できるから……というのは冗談で、首相としての仕事ぶりが決して悪くないからだ。衆参両院で野党が過半数を占める中、政策ごとに野党各党の話を聞いて政まつりごとを進める石破首相の政治姿勢が、うまくはまっているように思う。支持率もこれ以上は下がらないだろうし、今解散すれば、前回よりは良い結果になると思う。

一方、ポスト石破で名前が挙がっている各氏からも、彼らを推す勢力からも、政権奪取への強い意欲が伝わってこない。おそらく、臨時の自民党総裁選で勝てたとしても、国会での首相指名選挙に勝てるとは限らないというところがネックになっているのではないか。

自民党の長い歴史の中で、首相になれなかった総裁は2人だけだ。野党時代に総裁となった河野洋平、谷垣禎一の両氏は任期中に政権を取ることができず、首相のイスに座ることなく政界から引退した。将来の首相を目指す有望な若手としては、首相になれない可能性が気になるのだろう。

しかし、私は言いたい。政治家としてそれでいいのか。目先の利益にとらわれてはいないか。自民党総裁選は、自らの政策を広く国民に周知できるチャンスである。短期的な損得を気にせず、立候補して日本の将来像について議論を戦わせてもらいたい。政策が国民に認められれば、現在の国会の議席数がどうであろうと、首相への道が開けるはずである。

これまでも自民党総裁選は、活発な議論の中から次世代のスター政治家を生み出し、新しい支持者を獲得することで、長期政権を担う原動力となってきた。

私は、この短期的な損得勘定というものは、自民党内だけにとどまらず、日本全体の成長を妨げているように考えている。

昨年の衆院選、今年の参院選を通じて、有権者の支持を伸ばした国民民主党の「手取りを増やす夏」というフレーズも、ある意味で目先の利益を求める人々に刺さったのだと思う。また、野党の多くが公約にかかげた消費税減税・廃止も同様だ。消費者の支出を減らせば、手元の現金が増えるというのが、有権者に受けるという狙いだったようだが、消費税減税・廃止を掲げた各党は、「手取りを増やす夏」の国民民主党ほど議席を伸ばすことはなかった。

投資ブームに感じる私の違和感

私が思うに、最近の日本人は楽してもうけたいという意識が強くなったように感じる。『プレジデント』に限らず、さまざまな雑誌や本で投資が取り上げられている。書店に行っても、株や不動産の投資入門本をよく見かけるから、それだけ投資に関心のある人が多いのだろう。私が若いころは、「稼ぎたいならとにかく副業」だった。24時間しかない一日を有効に使いたいと、効率的に働く時間を捻出して働いた。就業後に肉体労働系の仕事もたくさんやった。変わったところでは、似顔絵描きのアルバイトの経験もある。ここに書いても誰も信じてくれないような、とんでもない仕事もやったものだ。高度経済成長期の空気感から来る勢いもあったかもしれないが、お金が欲しければ働くのが一番と考えていた。

(写真=時事通信フォト)

検索時にプレジデントオンラインに関連する記事が表示されます

【関連記事】
水没した車を誰が動かせるのか君は知っているか
贈り物ひとつで本気度は見抜かれている
消費減税は高市内閣にとっての「天王山」だ
首相が休日を高級ホテルで過ごす本当の理由
私がマスコミを味方につけた禁断のテクニック