震災復旧を優先喚声呼んだ「決断」
「神仏とは、何かをお願いしたりおねだりする相手ではない。自らの決意を伝え、努力の結果を報告し、新たな誓いを約束する対象でなければ、神も仏もみていてはくれない」
十数年前、28歳で会社を興し、30年間で3000億円企業に育て上げた経営者から聞いた言葉に、「その通りだ」と思った。自立と自律。自らの決断と行動にすべてがかかるリーダーの心構えの、核心だ。
「アベノミクス」は、日本の風向きを変えた。だが、すべての企業や経営者にとって、追い風となったわけではない。円安による輸入価格の上昇で、わずかな利益も飛んでしまった食料品加工会社も、少なくない。地方へいけば、電力料金とガソリン代の上昇で「アベノミクスは、マイナスばかり」との嘆きも、珍しくない。でも、神仏はもちろん、政治家や役所への依存心などみせず、「自分たちは、何をすべきか」「地域や社員たちのために、何を優先するべきか」を考え続け、実践する経営者群もいる。大山流も、その典型だ。
2011年3月11日、千葉市にいた。ドラッグストアの経営者らを招き、新商品を紹介するイベントを開いていた。午後2時46分、大きな揺れに続き、地面から砂が噴き出す。1978年に起きた宮城県沖地震でも、液状化現象を経験した。死者28人、負傷者が1千人を超えた震災の体験から、「この震源も、宮城県沖だろう」と推定し、すぐに仙台の本社へ戻ることを決断する。
成田空港から仙台へ飛ぼう、と思った。だが、車中のテレビで仙台空港も津波に襲われたと知り、陸路を北上する。仙台にいる妻の安否を確認しようと思うが、携帯電話がつながらない。テレビに、被災地の火事の様子も映る。様々なことが頭をよぎり、気が急ぐが、福島県で通行止めに遭う。東北新幹線の新白河駅近くへ戻り、ビジネスホテルのロビーで仮眠した。ほどなく一室だけ確保でき、小さなシングルルームに、運転手も含めた4人で泊まる。