コスト上昇分を反映できない企業の実情
強欲インフレ、いわゆる「Greedflation(グリードフレーション)」とは、コスト上昇を超えて価格を引き上げ、企業が利幅を拡大する現象を指す。欧米では、食品などの価格上昇が続いた際に、その存在が盛んに議論された。日本では「便乗値上げ」という表現のほうがなじみ深い。
強欲インフレが起きているかどうかは、企業がコストに対してどれだけ価格を上乗せしているかを示す「マークアップ率」で測るのが一般的だ。内閣府の分析によると、日本企業のマークアップ率は2022年度で約1.3程度となり、2002年度以降おおむね横ばいで推移してきた。欧米諸国が2010年代後半に上昇傾向を強めたのとは対照的となる。
より足元の実情を映すのが「価格転嫁率」である。
帝国データバンクが2026年7月に全国1万518社から回答を得た調査では、企業がコスト上昇分のうち販売価格に反映できた割合は平均39.9%だった。2月調査の42.1%から低下し、再び4割を割り込んでいる。
つまり、100のコスト増に対し、価格に乗せられているのは40。残りの60は企業が負担している計算になる。まったく転嫁できていない企業も11.9%ある。
業種別では川下ほど厳しく、食品スーパーを含む各種商品小売業は33.1%、飲食店は28.7%だ。食品の値上げが相次いでいるからといって、企業が上がったコストをそのまま、あるいはそれ以上に消費者へ押しつけているわけではない。
むしろデータから浮かび上がるのは、「値上げしているのに、コスト増を十分には転嫁できていない」という日本企業の姿だ。
小売店が値上げを止めている商品も
それでも、消費者が「こんなに食品が高くなった」と感じるのはなぜなのか。
一つは、メーカーが値上げを発表しても、その価格がそのまま店頭に反映されるわけではないからだ。
2026年7月の消費者物価指数は、生鮮食品を除く総合(コアCPI)で前年同月比プラス1.8%。生鮮食品を除く食料でもプラス3.0%にとどまる。メーカーの値上げ品目数の多さと比べると、数字だけを見れば上昇幅はそれほど大きくない。
例えばパンは前年同月比3.2%上昇しており、大手メーカーの値上げが店頭価格にも比較的反映されやすい。一方、清涼飲料水や加工食品、菓子などは、小売店側の価格競争が激しく、メーカーの値上げがそのまま消費者価格に転嫁されにくい。

