新薬完成を待たずに今すぐ試せる予防法

卵巣がんの患者で比較すると、明らかに、転移したがんの方がGLUT5の発現が高い。また、GLUT5の発現によって、生存率が大きく異なる。GLUT5の発現が強いほど、生存率は下がる。

果糖を取り込めないようにしてやれば、がんが縮小する可能性は高い。もっと具体的にいえば、GLUT5の阻害剤が、がんの悪性化を止める可能性はある(図表4)。

【図表4】果糖を取り込むほど生存率が低い【ヒト】
ヒトの卵巣がんの患者の中で、転移巣を持つ患者は、有意にGLUT5の発現が高かった(A)。またGLUT5を強発現している患者は、有意に生存期間が短かった(B)。少なくともステージ3またはステージ4のがんのある患者は、果糖を食べるのをやめたほうがいいと思う。果糖ががんの悪性化を促進することは間違いない。

何よりも、GLUT5阻害剤の実用化が待たれる。まだ基礎研究の段階で、ヒトの臨床研究にさえ入っていない。市場に出るまでには、最低でもあと10年以上は必要だ。また、ヒトの臨床試験で脱落する薬剤も多いので、ここは時間をおいて見守るしかない。

しかし、落胆することはない。GLUT5阻害剤と同じ効果を、すぐに得ることができる。それは簡単なことだ。糖質のバカ食いさえしなければ、果糖は体内ではほとんど合成されない。体外から入ってくる果糖をなくせばよい。すなわち果糖制限をすればよい。

(※1)ワールブルグ効果:ドイツの生化学者であるオットー・ワールブルグは、がん細胞は、酸素が十分であっても、ミトコンドリアを使わず、解糖系という代謝経路を優先してエネルギー生産を行なうことを発見した。
(※2)ケトヘキソキナーゼ(KHK):フルクトース(果糖)をフルクトース‐1‐リン酸へリン酸化する酵素で、フルクトース代謝の“最初のゲート”を担う重要な酵素。
Zhang H, Zhu Y, Xu C. Ketohexokinase: A central mediator of fructose-associated pathogenesis and promising therapeutic target. Pharmacol Res. 2026 Aug;230:108330.
(※3)悪性がんの果糖取り込みの増加:転移能を持った悪性のがん細胞は、果糖の取り込みが増加する。果糖だけに依存したエネルギー生産を行なうようになる。
1. Cui Y, Tian J, Wang Z, Guo H, Zhang H, Wang Z, Liu H, Song W, Liu L, Tian R, Zuo X, Ren S, Niu R, Zhang F. Fructose-Induced mTORC1 Activation Promotes Pancreatic Cancer Progression through Inhibition of Autophagy. Cancer Res. 2023 Dec 15; 83(24): 4063-4079.
2. Jin X, Liang Y, Liu D, Luo Q, Cai L, Wu J, Jia L, Chen WL. An essential role for GLUT5-mediated fructose utilization in exacerbating the malignancy of clear cell renal cell carcinoma. Cell Biol Toxicol. 2019 Oct; 35(5): 471-483.
3. Yang J, Dong C, Wu J, Liu D, Luo Q, Jin X. Fructose utilization enhanced by GLUT5 promotes lung cancer cell migration via activating glycolysis/AKT pathway. Clin Transl Oncol. 2023 Apr; 25(4): 1080-1090.
(※4)GLUT5:肝臓や小腸などの上皮細胞に存在し、果糖だけを輸送する膜タンパク質。
1. Du L, Heaney AP. Regulation of adipose differentiation by fructose and GluT5. Mol Endocrinol. 2012 Oct; 26(10): 1773-82.
2. Liang RJ, Taylor S, Nahiyaan N, Song J, Murphy CJ, Dantas E, Cheng S, Hsu TW, Ramsamooj S, Grover R, Hwang SK, Ngo B, Cantley LC, Rhee KY, Goncalves MD. GLUT5 (SLC2A5) enables fructose-mediated proliferation independent of ketohexokinase. Cancer Metab. 2021 Mar 24; 9(1): 12.
(※5)GLUT5阻害剤:GLUT5を抑制することにより、果糖の取り込みを阻害する薬剤。少なくとも動物では、乳がんや大腸がんなどの悪性がんを抑制する。MSNBAが代表例。
1. Włodarczyk J, Włodarczyk M, Zielińska M, Jędrzejczak B, Dziki Ł, Fichna J. Blockade of fructose transporter protein GLUT5 inhibits proliferation of colon cancer cells: proof of concept for a new class of anti-tumor therapeutics. Pharmacol Rep. 2021 Jun; 73(3): 939-945.
2. Chan KK, Chan JY, Chung KK, Fung KP. Inhibition of cell proliferation in human breast tumor cells by antisense oligonucleotides against facilitative glucose transporter 5. J Cell Biochem. 2004 Dec 15; 93(6): 1134-42.

検索時にプレジデントオンラインに関連する記事が表示されます

【関連記事】
これがアメリカの低所得層をぶくぶく太らせた…日本のコンビニに必ず置いてある「ドロッとした液体」の正体
腸の壁に穴が空き、全身がボロボロに…内科医が「毎日食べてはダメ」と警告する"みんな大好きな朝食の定番"
台所を見れば認知症の予兆がわかる…介護のプロが断言「物忘れ」よりも早く気づける"食卓の異変"
これで分数・小数・速さは大丈夫!親子で楽しみながら「抽象的な数」を理解する会話術
「ADHDグレー」と診断された子どもたちが高確率であてはまる幼少期からの「危険な習慣」