この弊害が最も表れたのが味材(シーズニング)と包材(パッケージ)だ。

たとえば、商品カンパニーA、B、Cがそれぞれ期間限定で「梅味」を出すことを企画すると、各商品カンパニーの開発担当者はそれぞれ異なる味材のメーカーと組んで梅を漬け込み、独自に味材を開発する。つまり、3種類の「梅味」の味材ができてしまうわけだ。

カルビーが使用している味材は、そのほとんどが味材メーカーと協働して天然素材から作っているものだから、高価だけれど確実においしい。だが、仕入れと廃棄のロスが大きすぎた。

「商品カンパニーに横串が通っていれば、梅を使うなら一括購入しようということになったかもしれない。廃棄もはるかに少量で済んだはずなのです」

包材についても、どのサプライヤーを使うかは商品カンパニーが指示していたが、包材に対するクレームには工場が個別に対応し、改良も個別に行っていた。

その結果、同じ商品の包材なのに工場によって使っているものが微妙に異なるという事態が発生していたのである。

「私がいまのポジションに就いて一番驚いたのは、包材の種類の多さでした。袋入りのスナックの包材が、およそ50種類あったのです。包材のフィルムは数ミクロンの薄い層を重ねてありますが、層の厚さが数ミクロンずつ微妙に違っていたりする(笑)。みんなよかれと思ってやってきたわけですが、組織の形態がこういう事態を招き寄せてしまったのです」

この、マトリクス構造が生み出した弊害を、松本はいかにして除去したか。組織形態をシンプルなフォーク形に変えてしまったのである。そして本社に購買部を設置して、バラバラ購買を集中購買に改めた。その結果、資材の一括購入が可能になり、購買コストは大幅に削減され、ムダな廃棄も激減したのである。