【田原】じゃあ、こう聞こう。どうして堀江は叩かれて、あなたは叩かれなかったの?

【藤田】田原さんは、堀江さんについて、よくネクタイの話をされるじゃないですか。だから今日はネクタイをしてきました(笑)。

【田原】僕は堀江がネクタイをしないことは悪いとは思わない。ただ、彼が大阪近鉄バファローズを買えなかったのはネクタイを締めなかったからということはたしかだよね。

【藤田】堀江さんは、人がどう思うかということをあまり考えないですからね。

【田原】僕は、そこが堀江のいいところだと思う。

【藤田】いいところであり、考えなくちゃいけないところでもあると思います。自分の金だから好きにやっていいだろうとなってしまうと、不快に思う人もいる。社会に生きている以上、そういうところは考えないと。

【田原】わかりました。もう一つ聞きたい。孫正義は、ドコモを抜くとかいう話は大したことがなくて、次はロボットだと言ってる。藤田さんはヤフーを抜いて、次は何ですか?

【藤田】僕はすごい会社をつくるということを目的にしているので、この会社を抜きたいとか、次はロボットだ、エネルギーだということは考えていません。正直、なんでもいいと思ってます。

【田原】なるほど、藤田さんは、まさに起業家なんだ。

【藤田】起業家というか会社をずっと建築してるような気持ちでやっています。

【田原】建築中だとすると、サイバーエージェントはいま、何合目ですか?

【藤田】ときどきそう聞かれるんですけど、まだ売り上げ1600億ぐらいの規模で、まったくお恥ずかしいレベル。たぶん兆の規模にいかないと、まだピンとこないと思います。

【田原】わかりました。これからも注目しています。頑張ってください。

田原総一朗が見た藤田晋の素顔

アメーバは現在、会員数が3000万人いるという。サイバーエージェントはネット広告代理店の印象が強かったが、いつのまにか大人気のサービスを運営する会社になっていて、本当に驚いた。ブログブームが到来したとき、多くの会社が参入した。その中から抜きん出るために、藤田さんは相当の苦労を重ねたという。その努力は称賛に値する。

ただ、本当の勝負はこれからだろう。ITは安定がない世界だ。次々に新しいことにチャレンジしなければ、若い会社にポジションを奪われてしまう可能性が高い。現在はスマートフォンに注力しているところだというが、藤田さんの頭の中では、もう次のアイデアが浮かんでいるに違いない。いまから非常に楽しみにしている。

サイバーエージェント社長 藤田晋
1973年、福井県生まれ。青山学院大学卒業後、インテリジェンスを経て、98年、24歳でサイバーエージェント設立。インターネットの広告代理店事業で躍進し、2000年、当時史上最年少で東証マザーズ上場を果たす。現在、芸能人ブログやゲームなどを展開するインターネットサービス「アメーバ」が主力事業。
田原総一朗
1934年、滋賀県生まれ。早稲田大学文学部卒業後、岩波映画製作所、テレビ東京を経てフリーに。活字と放送の両メディアで評論活動を続けている。『塀の上を走れ』『人を惹きつける新しいリーダーの条件』など著書多数。
(村上 敬=構成 宇佐美雅浩=撮影)
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