高市内閣と財務省の対立
財務省の水面下での働きかけもあり、自民党議員の多くに減税反対の声が広がっている。閣議決定した以上、法案として秋の臨時国会に提出されれば、通常ならば自民党が国会の圧倒的多数を握っている以上、すんなり法案は通り、来年4月に減税が実施される。
ところが、臨時国会での可決まですんなり進むかどうか予断を許さないと、霞が関では囁かれている。財政規律派の官僚たちが自民党の減税反対派を焚き付けている一方で、高市首相周辺は2月に初当選した「高市チルドレン」に首相の減税方針に従うよう圧力を強めている。高市内閣と財務省が抜き差しならない事態に直面しつつあるというのだ。
両者の緊張が一気に高まったのは8月7日のこと。同日発表された幹部人事で、主計局次長だった一松旬氏が東京税関長に転出することが発令されたのだ。一松氏は「次官確定の逸材」と言われていたが、近年は「上がりポスト」になっている東京税関長に更迭されたわけだ。
消費税の取り扱いを議論していた社会保障国民会議に減税反対を訴える団体が次々に呼ばれていたことに高市官邸が怒り、事務方の担当だった一松氏を更迭させたという解説が流れている。消費減税を巡って言うことを聞かない財務官僚を「飛ばす」という強権を発動したというわけだ。臨時国会が近づくにつれ、この対立が激化する可能性があるのだ。
物価上昇により税収が上がっている
では、財務省が必死に抵抗するように消費減税は愚策なのだろうか。
2025年度の一般会計税収は84兆2000億円と、6年続けて過去最高を更新した模様だ。前年度に比べて約9兆円も税収が増えた。内訳は消費税が1兆円増の26兆円、所得税が4兆円増の25兆3000億円、法人税が3兆8000億円増の21兆7000億円だった。主要3税目で大幅に税収が増えているのだ。
税収増の要因は好景気で経済が盛り上がっているためではない。最大の要因は物価上昇だ。賃上げが進んで所得金額が増えれば、当然、所得税も増える。だが、同時に物価が上がっているので、所得が増えても物価上昇率がそれ以上だと、実質的な所得は減った事になる。消費税も、まったく同じ商品を買った場合でも、価格が1000円だったものが1200円になれば、消費税は100円から120円に2割も増える。つまり実質的な国民の生活は改善しないのに、税収は増えるということになるわけだ。

