「誰のおかげで生活できたと思ってるんだ」
夫は生活費を減らす一方で、晩酌用の酒やたばこ、趣味にはこれまでどおりお金を使っていました。自分の小遣いは守りながら、恵子さんにだけ節約を求める夫。恵子さんが抗議すると、夫はこう言いました。
「これまで40年近く、誰のおかげで生活できたと思ってるんだ」
その言葉に、恵子さんは胸が締め付けられました。
夫が長年仕事に専念できたのは、恵子さんが働く時間を調整し、家事や育児を担ってきたからでもあります。恵子さんの年金が少ないのも、家族を優先し、扶養内という働き方を選び続けてきた結果でした。しかし夫には、「自分が家族を養ってきた」という意識しかないのです。
実は、熟年離婚の相談では、このような認識のズレは決して珍しくありません。夫は「自分が働いて家族を養ってきた」と考え、妻は「自分が家庭を支えてきたからこそ夫は安心して働けた」と考えています。お互いの貢献を当然のものとして受け止め、感謝や理解を失ってしまうと、長年積み重ねてきたものが一気に崩れてしまうことがあります。
年金は「自分のお金」か
年金は、自分が長年働いた結果として受け取るもの。そのため、夫は「自分のお金なのだから、自分が自由に使っていい」と考えていたのかもしれません。恵子さんに生活費を渡しているのも、自分が面倒を見てやっているからだと思っているようでした。
長年積み重ねてきた配慮や犠牲を、夫は一度も理解していなかったという事実に気付いた恵子さんは、この夫と残りの人生を共に歩む気持ちを失ってしまいました。
「これから先も、この人の判断一つで生活が左右され続けるのは耐えられない」
そう考えたとき、初めて「離婚」という二文字がはっきりと頭に浮かびました。
それでも、「離婚したら生活できないのではないか」という不安は残っていました。そこで恵子さんは、ファイナンシャルプランナーに相談し、老後資金をシミュレーションしてみることにしました。

