「ビジネスモデル」によって生じた歪み
少子高齢化の中、私学は生徒集めに躍起になっている。レギュラーになれなかった選手も学校側にとっては大事な「お客さん」であり学生数、学費を維持するために退学、転校させるわけにはいかない。
このため多くの部員を擁する学校では、チームを1軍、2軍、3軍に分け、各レベルのリーグ戦などを実施している。監督のほかにも複数のコーチを配置して、ベンチを外れた選手の指導もそれなりに行っている。
しかしその優先順位は、圧倒的に「1軍ファースト」であり、それ以外との差は歴然としている。いわば学校側の「『甲子園出場』をアピールして多くの野球部員を集める」という「ビジネスモデル」によって、この矛盾に満ちた「野球部寮」が運営され続けていると言っても良い。
皮肉なことに、広陵高校野球部のモットーは「一人一役全員主役」だった。暴力をふるった上級生たちも、転校に追い込まれた下級生も「自分は主役なのだ」と思っていたのだろうか?
智辯和歌山は40人が「定員」
本音では「多すぎる部員数は迷惑だ」と思っている監督も少なくない。現東洋大姫路高校監督の岡田龍生は大阪の履正社高監督時代、バスで選手の送迎もしていたが「わしが(面倒を)見れるのは、ワンバスまでや」といった。ワンバスとはバス1台に乗り切れる人数、つまり40人のことだ。
事実、智辯和歌山高校などは1学年10数人、3学年約40人の「定員」となっているが、前述のように多くの学校は「生徒数、学費確保」のために多くの部員を入学させている側面があるのだ。2026年5月末、第三者委員会の報告を受けて、広陵高校は野球部寮の廃止を発表した。
野球部の暴力事件そのものは「今」に限ったわけではない。今回新しいのは、事件の拡散にSNSが使われたことだ。8月にSNSで被害者側からの情報が発信・拡散されると、広陵高は、甲子園での試合を急遽辞退した。
日本高野連会長の寶馨(当時)もSNSの利害得失について8月10日の記者会見でコメントを発したが、世間は「SNSで騒がれたからあわてて火消しを図った」と受け止めたはずだ。
