きっかけはSNSでの拡散

事件はこの年1月に起こった。硬式野球部1年生男子が寮では禁じられているカップ麺を食べたとして、4人の2年生男子が暴力をふるった。学校側は関係者に聞き取りをし、広島県高野連に報告、県高野連は日本高野連に報告した。これを受けた日本高野連は広陵高を「厳重注意」としたが、処分は規定に従って非公開とした。

しかし、加害生徒は謹慎処分になったものの、被害生徒は3月に転校を余儀なくされた。被害生徒側はSNSで情報を拡散、7月にはメディアの知るところとなり、甲子園に出場した広陵高への非難が高まっていた。広陵高は、世間の非難の声に堪えかねて出場を辞退したのだ。

8月10日の広陵高の出場辞退のニュースを、筆者は北海道新十津川町で行われていた「LIGA サマーキャンプ」のネット裏で知った。周囲には高校野球部の監督たちがいた。

「広陵が出場辞退したそうです」というと、指導者たちは一様に肩を落とした。彼らにとって甲子園出場校は、夏の地方大会を戦ったライバルだが同時に「自分たちの代表」と言う連帯意識もあったのだ。

なぜ慶應高校では事件が起きないのか

「もっと早く手が打てなかったのだろうか?」「広陵は選手数が多いからなあ」と言う声が上がる中、筆者は隣にいた慶應義塾高監督の森林貴彦に「先生の学校も選手が100人以上いますが、なぜこうした事件が起こらないのですか?」と聞いてみると、「うちは寮がありませんから」との答えが返ってきた。

2025年夏の甲子園出場校49校の部員数上位10校を記すと、以下の通りになる。

広陵(広島)164人
市立船橋(千葉)116人
聖光学院(福島)115人
健大高崎(群馬)109人
岡山学芸館(岡山)108人
創成館(長崎)104人
東海大星翔(熊本)103人
中越(新潟)98人
花巻東(岩手)97人
関東第一(東東京)92人

甲子園でのベンチ入り選手数は20人だ。3学年90人超、1学年当たり30人以上の部員数となれば、甲子園はおろか、公式戦の出場機会さえほとんどない部員が大半だということになる。

しかしながら、こうした部員たちも「甲子園出場」を夢見て強豪校に入学している。不本意ながら競争に敗れ応援席に回っているのだ。