誰もが経験する「心理的な食行動」とは
食は生命の維持に必要不可欠ですが、もう一つの重要な役割は、美味しい食物は心に愉しみ、幸福感、満足感を与えてくれることです。また、「同じ釜の飯を食う」という言葉もありますが、古の時代から食(会食)は社会的つながりを作る手段として使われてきました。
興味深い点として、我々は時には生命維持には必要のない摂食行動を示します。食事の締めにデザートを食べたくなる「別腹」はその代表例です。
また、仕事が忙しい時や試験勉強などストレスがかかった時に食べたくなる「ストレス食い(やけ食い)」、観光地でいい匂いがして食べたくなる「衝動食い」、残食がもったいなくて食べてしまう「もったいない食い」などの心理的な食行動は誰もが経験します。
以上は、心理学的にも指摘されているヒトの摂食行動現象です。
我々の食習慣はメタボリックシンドロームなど多くの疾患の環境要因となっています。そこで、疾患リスクを減らすためには食習慣を改善することが第一と誰もが理解しています。しかし、ダイエットが失敗しやすいように、健康にはよくないとわかっていながらも、好きな食物を食べたい欲求は強く、食習慣をなかなか改善できません。
「好き嫌い」の影響を強く受ける摂食
では、上記のような摂食行動はどのように制御されているのでしょうか。
我々の摂食行動は食物に対する嗜好性(好き嫌い)に強い影響を受けます。我々はそれぞれの食物に対する嗜好性を評価して、食べるか食べないかを意思決定しています。
エネルギーと栄養要求性に基づく摂食行動の「代謝制御」に対して、食嗜好性に基づく摂食行動の制御を「認知制御」と呼びます。摂食行動の代謝制御は視床下部と末梢組織の連携で制御しているといえますが、認知制御は視床下部と認知、情動(感情)、意思判断に関わる脳領野との連携で制御されていると考えられます。
代謝制御のメカニズムの解明は分子レベルまで進展していますが、認知制御のメカニズムの解明はこれからです。