糖尿病は「自己管理不足の病気」ではない

糖尿病というと、「自己管理ができない」「おいしいものを食べすぎた」といったイメージがつきまとう。しかし、専門家はこの見方を明確に否定する。

糖尿病・内分泌専門医の坂本昌也医師は「2型糖尿病は、遺伝、体質、ストレス、加齢、睡眠不足、運動量の低下など複数の要因が重なって発症する病気です。甘いものや炭水化物、脂っこいものを食べすぎるだけで発症するわけではありません。誰でもなり得る病気です」と話す。

坂本医師
坂本医師(筆者撮影)

実際、働き盛りの40〜50代で糖尿病と診断されるケースは珍しくない。

仕事のストレス、長時間労働、運動不足、睡眠の質の低下、不規則な食事時間――これらはすべて血糖値を押し上げる要因となる。糖尿病は“自己管理不足の病気”ではなく、現代の働き方そのものが生み出す病気と言えるのだ。

そして、糖尿病が熱中症リスクを高める理由は、本人の努力だけではどうにもならない“体の仕組み”にある。

糖尿病の主症状である高血糖が続くと、体は余分な糖を尿として排出しようとし、尿量が増えて体内の水分が奪われる。水分が減ると血液は濃くなり、汗をかいて熱を逃がす力も落ちる。脱水によって血糖値がさらに上がれば、また尿量が増えるという悪循環にも入りやすい。

いわゆる“糖尿病特有の脱水”である。血液は濃くなり、体温調節がうまくいかなくなる。

坂本医師は「糖尿病の人は、暑い日に水分を取れば大丈夫、という単純な話ではありません。高血糖が続けば尿量が増えて水分が失われ、自律神経の障害で汗の出方や喉の渇きの感じ方も乱れます。つまり、本人が気をつけているつもりでも、体の側で脱水と体温上昇が進んでしまうのです」と指摘する。

さらに、自律神経が障害されると、汗をかくタイミングや量が乱れ、体温を下げる機能が低下する。喉の渇きにも気づきにくくなるため、「我慢している」わけでも「注意を怠った」わけでもないのに、本人の自覚より先に脱水が進行してしまうのだ。

暑さで食欲が落ちると、治療薬が効きすぎる

暑さの中では、この病気特有の弱点が熱中症の危険を一気に高める。

糖尿病では治療そのものも、低血糖のリスク要因になる。血糖値を下げる薬を使うことが多いため、この薬が、働き盛りの世代にとっては“もう一つの落とし穴”になってしまうのだ。

坂本医師は「血糖値を下げる薬は、食事量が少なかったり、暑さで食欲が落ちたり、運動量が増えたりすると、効きすぎて低血糖を起こすことがあります。治療が始まったばかりの人ほど、体が慣れていないため低血糖が起きやすい」と説明する。