「保身」しか頭にない記者たち
「紙」をもらうために「是非モノ」を報じる。ここには、メディアが日々お題目として唱える「権力監視」が名ばかりどころか、その発想のかけらすらない。同業他社との「競争」ですらない。「特オチ」をすれば、社内での立場が悪くなり、出世や異動に響く。そんな保身しか頭にないのではないか。
ここに、福岡県におけるメディアの特徴があらわれているのではないか。それは、福岡県の大きさに由来する。福岡県は、約507万人の人口を誇る、全国8位の自治体である。県庁所在地の福岡市に加え、第二の都市・北九州市という2つの政令指定都市を抱える。アジア各国へのハブとしての役割もあり、福岡市だけでも2024年には約2441万人の観光客が訪れている。
巨大な自治体であるから、マスコミ各社も多くのリソースを割く。ここが、他の都市圏と比べたときの大きな違いである。
東京に本社を置く「キー局」=テレビ局は、東京都だけではなく、関東全県をカバーする。大阪に本社を置く「準キー局」もまた、大阪府に限らず、京都府や兵庫県、和歌山県など近畿一円のニュースを報じる。名古屋市のテレビ局もまた、中部地方全体を扱っている。
福岡マスコミが「タコツボ化」の背景
つまり、こうした広域のテレビ局にとっては、どこか1つの自治体に関するニュースで「特オチ」したとしても、その痛手は大き過ぎるわけではない。藏内氏のような「ドン」に睨まれ、「出禁」=出入り禁止措置で取材ができなくなる罰を受けたとしても、他のネタで挽回する機会はある。
実際、私が大阪と京都、それぞれの行政取材を担当した際には、福岡ほどのプレッシャーは受けなかった。もちろん、単に私が鈍感だったり、無能だったりした可能性も高いものの、それでも、どこの社も、藏内氏ほどに気遣っている取材対象はいなかった。
これに対して、福岡のマスコミ、特にテレビはタコツボ化せざるを得ないのではないか。福岡県政のネタは、ここまで述べてきたように藏内氏の「紙」を得なければ報じられない。そう信じてしまっている以上、抜け道がない。
すると、地元テレビ局だけではなく、新聞も巻き込み、ますますタコツボ化した同業他社間(のみ)でのメンツをかけた「競争」に拍車がかかる。

