フランス人が徹底して妊婦に席を譲る理由
フランス人はどうしてここまで徹底して、妊婦さんに席を譲るのだろうか?
私は、日頃から日本での「妊婦に席を譲るか問題」を目にしているので、この違いが気になる。
フランス人は、日本人が感じている葛藤を持つことはないのだろうか。フランス人にも、疲れている人も、体調が悪い人もいる。そして、席を譲ってもらった妊婦さんが、「譲ってもらって当たり前」という態度を取るという点に関しては、フランスではそれはもう、譲るほうも譲られるほうも当たり前だという認識ができあがっている。
私は、この点に関しては何年も、そして何人ものフランス人に質問をし続けてきた。
だが、誰一人として、核心を突く答えを持った人はいなかった。誰もが、
「え? だって、当たり前じゃない」
「いや、ルールだから」
と最初に言った後、なんとかそこに理由をつけようと、
「みんなママから生まれてきたのだから、妊婦は尊重すべきだ」
「妊娠中は身体に負担がかかるのだから、助けるべきだ」
と、何かを言おうとはしてくれた。確かにそうだろうが、あそこまで徹底して席を譲るには、本人たちも気づいていない、他の理由がありそうだ。
赤信号で止まるのと同じ
なぜフランス人は、あんなにも全力で、誰もが妊婦に席を譲るのか。この疑問について、質問と探求を繰り返してきた私はついに、ある答えにたどり着いた。そもそも、どうしてフランス人は、妊婦に席を譲る理由を答えられないのか。彼らはもう答えてくれていた。
「いや、ルールだから」
そう、単純に理由など持たず、ただ本当にルールとして譲っているのだ。
私たちは日々、いくつものルールを守りながら生活している。
例えば、私たちは、車の運転中、赤信号になると止まっている。すると私が止まったことにより、別方向の道路で止まって待っていた車が進むことができる。その車たちは、私が止まらなければ、道が空かず、進むことはできなかったのだ。
だけど、私に感謝などすることなく、当たり前の顔をして進んでいく。
一方、私も、何も考えることなく止まっている。向こう側の車を通してあげようと思って、止まったのではない。何も考えることなく、ただ、「赤信号は止まるもの」というルールに従った行動をとっただけだ。私が止まることにより、向こう側の車は進むことができた。もしもここで「どうして赤信号で止まるの?」と尋ねられれば、私は「だって、ルールだから」と答えるだろう。
フランス人に「どうして妊婦に席を譲るの?」と尋ねれば、「だって、ルールだから」という答えが返ってきた。フランスでは、「妊婦に席を譲る」というルールが、「赤信号で止まる」と同じくらいのルールとして認識されている。赤信号を見れば、何も考えずに止まる。妊婦を見れば、何も考えずに席を譲る。

