「偏差値とゴマすりのうまさは比例します」。厚生労働省の元キャリア官僚として、東大法学部出身の秀才に囲まれてきた兵庫県立大学大学院応用情報科学研究科教授・中野雅至氏はこう断言する。大物政治家たちを籠絡するエリートたちの技を開陳しよう。
これといった長所を見つけられないときは、短所をほめることです。
たとえば、私が大学で行っているプレゼンの授業でのこと。学生に10分の制限時間を与えたものの5分で終わってしまった。そこで、次のように言いました。
「よく負けずに5分間もがんばったね。君には勇気がある。その感じでプレゼン時間を少しずつ延ばしていけばいい」
短所といえども、それは個性です。表現方法や話し方にさえ気をつれば、長所と同じような効果を発揮します。
ただしこれは、どうしても難しい場合の必殺技。日ごろから相手のほめどころを探しておくことが重要です。
ポイントは、「見えるもの」と「見えないもの」の双方から探すこと。見えるものとは、身体的特徴や持ち物。男性なら、「背が高い」「スーツが格好いい」など。見えないものは多種多様です。たとえば、過去・現在・未来に注目しましょう。過去は、学歴や経歴について。現在は、所属する組織のステータスの高さ、仕事ぶりや性格など。未来は、たとえば「将来は社長ですね」というような、これからの活躍に対するほめ言葉です。
より効果的なゴマすりは、誰も気づかない点や相手が思わずうなずくような本質をほめること。秀才に対してその頭のよさに触れず、「意外と遊び人ですね」。強面風の上司に「本当はやさしい人なんですね」。このように相手があまり言われていない言葉ほど、喜ばせる可能性が高い。ただし、的外れだったら逆効果。よくよく観察してから使いましょう。
(構成=小檜山 想)