「偏差値とゴマすりのうまさは比例します」。厚生労働省の元キャリア官僚として、東大法学部出身の秀才に囲まれてきた兵庫県立大学大学院応用情報科学研究科教授・中野雅至氏はこう断言する。大物政治家たちを籠絡するエリートたちの技を開陳しよう。

ゴマすりにもTPOはあります。衆人環視を避けて基本は密室で行いましょう。

人間は誰でもほめられたいものですが、ほめられてにやにやしている姿を人前にさらすことを望む人はいません。当然、ゴマをする側もまわりに知られるのは損。

「あいつ、ゴマすってばっかりだ」と、うわさが広まれば周囲の評価はぐっと下がります。

狙いたいのは、上司と会議室で2人きりになったとき、外出した帰りの電車の中や差し向かいで酒を飲むとき。偶然トイレで会ったときもチャンスです。なかなか2人きりになる機会がなければ、上司に相談を持ちかけるついでに、机のそばでそっとささやくのもいいでしょう。

時間に関しては、私の役所時代の経験でいえば朝は鬼門です。なぜか、役所には朝が苦手な人が多くて大変でした。仕事の相談をしてもずっと不機嫌で「僕の頭が悪いのかなあ。もっとわかりやすく説明してくれないか」と皮肉を言われることもありました。こんな状態ではなにを言っても通じない。会心のゴマすりも「ふん」のひと言ですまされてしまう。

夜がだめという上司も多かった。「何でおまえは、おれが帰る寸前に持ってくるんだ」と。もう帰宅モードに入っている人に聞く耳なし。そんな人には、凝ったゴマすりよりも「お疲れ様です」のひと言で十分です。

総じて話しかけやすいのは、昼ごはんを食べた後。この時間帯は誰しもリラックスした雰囲気で、面倒な仕事の話もゴマすりも受け入れられやすいと思います。

メールでゴマすりしようと考える人もいるかもしれません。しかし、直接面と向かって話すほうがいい。機嫌が悪いときにゴマすりメールを読まれたら、スルーされるのがオチです。

上司を観察して、その人ごとのバイオリズムを見極めましょう。人間とは不思議なもので、どんなに不機嫌な人でもどこかで気が緩むものらしく、ふと機嫌がよくなる瞬間があります。そんな瞬間を見計らって仕事の相談を持ちかけ、そのついでにさりげなくゴマをする。同じ言葉でも、相手の印象はがらっと変わるはずです。

相手の顔色を見ながら受け入れやすいタイミングを計るテクニックを磨けば、少ないリスクで大きなメリットを得られるでしょう。

(構成=小檜山 想)
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