理想は「入りにくく、見えやすい」場所

多くの商業施設では、男性用と女性用の入り口が隣り合わせに並んでいます。しかも多くの場合、入り口には壁が設けられているため、外からは中の様子がわかりません。これは、犯罪の機会を与えやすい構造そのものです。

トイレの入り口
写真=iStock.com/photo
※写真はイメージです

かたや海外の公衆トイレに目を向けると、男女の入り口が離れていたり、建物の反対側に設けられていたりと、犯罪者に機会を与えないデザインが随所にみられるといいます(※1)

※1 小宮信夫「品川の『コンペ最優秀トイレ』は、“犯罪者の天国”だった…専門家が警告『日本のトイレが抱える構造的な欠陥』」プレジデントオンライン2025年11月13日

校内盗撮を防ぐためにも、「入りやすく、見えにくい」場所の反対、つまり「入りにくく、見えやすい」場所をつくることが基本指針となります。ここでは、校内盗撮の温床になりやすい部室や更衣室を例に考えてみましょう。

部室や更衣室は、授業や部活の前後であれば誰でも自由に出入りできます(=入りやすい)。ところが、一度部屋の中に入ってしまえば、外部からは何が起こっているか、まったくわかりません(=見えにくい)。

さらに、出しっぱなしにされた荷物や山積みの備品は、小型カメラを隠すための格好の死角になります(※2)

※2 平松直哉、池田暁子「プロから教わる巡回方法――あやしいものの見つけ方」『教職研修』(教育開発研究所)2025年11月号

「不審な物に注意する」だけでは防げない

盗撮を防ぐには、この「入りやすさ」と「見えにくさ」を崩すことです。利用時間を厳格に管理して、入りにくくする。室内に物を置きっぱなしにすることを禁止し、死角をなくす。

「不審な物がないか注意する」といった精神論ではなく、盗撮しにくい環境そのものをつくるのです。もちろん、犯罪機会論だけで校内盗撮を完全にゼロにできるわけではありません。しかし、「盗撮できない状況をつくる」という視点は、これまでの防犯教育には欠けていた、非常に合理的かつ実践的なものだといえるでしょう。

次に、子どもが加害者になる場合について、未然防止策を考えていきましょう。学校内における子ども同士の盗撮事件が報じられるたび、「学校でタブレットを配るのが間違いだ」といった、ICT機器の導入そのものを批判する声が上がります。しかし、それでは本質的な解決策になりません。

そもそもICT機器の導入は、文部科学省が推奨する「GIGAスクール構想」という大きな枠組みの一環です。GIGAスクール構想が始まる発端となったのが、世界各国・地域の15歳を対象としたPISA(国際学習到達度調査)の2018年調査でした(結果の発表は2019年)。

PISAは3年ごとに行われている調査で、義務教育終了段階までに学んだ知識や技能を、実生活でどの程度活用できるかを測るものです。