ベトナムのフリゲート艦が台湾海峡を通過
2025年10月に行われた総裁選挙で、高市氏は前回に続いて第1回投票で首位になり、決選投票でも小泉進次郎氏を破って当選した。それは、日本が中国に対して強硬な態度を取ることを決めた瞬間だった。
ただし、決戦投票が行われたことからも分かるように、圧倒的多数が高市氏の姿勢を支持していたわけではない。そんな高市首相は、支持してくれた人々に応える意味でも、岡田氏の質問に対して安倍元首相と同様に、「台湾有事は日本有事」と応えざるを得なかったとも言えよう。あいまいな回答は許されなかった。だが、それが中国を刺激した。
各国の反応を見ると、台湾はもちろんこの高市発言を歓迎した。そしてトランプ大統領は、先に述べたように曖昧な態度しか示していない。韓国政府は高市発言に対して冷ややかであり、韓国の世論は周辺情勢を不安定にするとして否定的に見ている。南シナ海の領有権問題を抱えるフィリピンも静観している。
そんな周辺国の中で、ベトナムは他国とは異なる反応を見せた。ベトナム政府はダンマリを決め込んでいるが、密かに別の行動をとった。2025年12月3日から4日、ベトナムのフリゲート艦チャン・フン・ダオ(陳興道)が台湾海峡を通過したのである。ベトナムの軍艦として初めての通過であった。
高市発言の支持を“やんわり”表明
チャン・フン・ダオはロシアから購入したゲパルト級フリゲート艦である。ベトナムは軍艦の名に歴史上の人物の名前を付けることが多い。陳興道は元がベトナムに攻めてきた時に活躍した将軍の名である。
2018年9月に日越外交関係樹立45周年を記念して、ベトナムの軍艦として初めて日本に寄港したのもチャン・フン・ダオであった。それはベトナムと同様に元寇に打ち勝った日本に対して、中国に一緒に対抗しましょうとの意思を伝えたものと言ってよい。
今回もベトナムは、日越友好のためという名目で7年ぶりにチャン・フン・ダオを派遣した。その際に台湾海峡を通過させた。わざわざ台湾海峡を通って中国を刺激することはない。台湾とフィリピンとの間のバシー海峡を通過する方が普通の航路だ。
台湾海峡を通過させたことは高市発言の直後であり、ベトナムが高市発言を支持していることを日本に対してやんわりと伝えるものになっている。一方、中国に対しては、「南シナ海での活動を制限しなければ、我々も日本などと連携を深める」という、より包括的なメッセージになっている。「竹のようにしなやかな外交」を意味する「Bamboo Diplomacy」を掲げるベトナム政府の真骨頂と言えよう。

