どの国にもなびかない「竹の外交」
ベトナムは2016年にグエン・フー・チョンが書記長に就任して以来、どの国にもなびかない竹のような外交方針を掲げている。そんなベトナムにとって、フリゲート艦の台湾海峡通過は大きな決断だったと思う。
2024年7月にグエン・フー・チョン書記長が亡くなり、トー・ラム氏が後を継いだが、トー・ラム氏は注意深く米国に接近しようとしている。フリゲート艦の台湾海峡通過は、米国に対するサインでもあったと思われる。米国は衛星を使って台湾海峡や南シナ海を常時監視している。米国はベトナムの意思を明確に把握したであろう。
もちろんベトナム政府は、この行動について一切声明を発表していない。中国も黙っていた。この事実は、台湾当局がつかんで公表するまで表に出ることはなかった。そして台湾がこの事実を公表しても、日本では気づく人はほとんどいなかった。この本を読んで初めて知った読者も多いことと思う。そのくらい日本人は海外情勢に鈍感である。
「社会主義国は仲がいい」は幻想
ベトナム人は中国が大嫌いである。ただし、ベトナムに赴任してきた駐在員などは、言われなければ、なかなかその事実に気づかない。なぜなら、ベトナム人が口に出して「中国人が嫌い」と言う機会が少ないからだ。それに筆者もそうだが、現在70歳以上の日本の老人にはベトナム戦争の記憶が残っている。
ベトナムは中国やソ連の援助を受けて米帝(アメリカ帝国主義)に勝利した。ベトナムと中国はどちらも社会主義国である、だから仲が良いはずだ。そのようにステレオタイプで考えてしまう。
しかし、社会主義国同士が仲が良い、というのは幻想である。そもそも「改革開放」に転じた現在の中国やベトナムを、もはや社会主義国と呼ぶことはできない。中国は1978年に改革開放路線に転じた。それに遅れること8年、ベトナムは1986年に改革開放路線に転じた。
ベトナムの改革開放路線は「ドイモイ」と呼ばれているが、これは「刷新」という意味のベトナム語であり、中国の改革開放路線とほぼ同じことを意味している。
両国は共産党が独裁政治を行っている資本主義国家である。それ以上でもなければそれ以下でもない。そんなベトナムと中国は、1979年に戦っている。中越戦争である。また現在も南シナ海の領有権を巡って争っている。それらは、ベトナム人が中国を嫌う理由の一つになっている。ただ、真の理由は、その歴史に根ざした民族感情にある。

