ガソリンを求め300mの車列ができる
さらに、調査中にある地域の区長さんと会ってご挨拶をしたが、いろいろな人が出入りしているので、防犯上の観点から町内の見回りが欠かせないという。「設備のいい避難所や、都市部に行けばいいのではないか」と思われがちであるが、損傷した家もある地域から離れにくいことには、防犯上の理由もあるのだ。
八代市では自宅からの避難直後の隙を突いた「火事場泥棒」が発生したとの報道もあり、被災地での窃盗犯罪が現実となっている。
被災地域では、被災直後から熱中症疑いによる搬送が急増している。7月31日の共同通信調べでは、地震発生翌日の29日から30日までの2日間で少なくとも計42人に上ったとしている。宇城市や八代市の地元消防は集計ができていないとしており、実態はさらに多い恐れがある。これまでの停電や断水で対策が難しい状況に加え、8月3日には熊本市で40.3℃を観測するなど厳しい暑さが続いており、一層の警戒が必要だ。
そして、ついに痛ましい事態も起きてしまった。氷川町では、7月30日に自宅敷地内の軽乗用車の車内で、ガソリンが切れてエアコンが止まった状態で発見された70代女性が、熱中症の疑いで死亡するという痛ましい事案が発生した。「初の災害関連死」の疑いとして調査されている。
ガソリンを得るのも容易ではない。熊本市以南のガソリンスタンドには、在庫切れで営業をしていない店舗や、在庫限りという看板が出ている店舗もある。営業中のスタンドでは、少なくとも300mほどの長さにわたって車列ができている場所もあった。移動だけでなく、エアコンの燃料となるガソリンも入手が困難となっていたのだ。
「トイレに行きたくない」の悪循環
ご迷惑を避けるために避難所となっている周辺には立ち寄らなかったが、断水している地域もあり、命の水も得られない地域もあった。現実、炎天下で体を冷やすには冷感タオルが役に立ったが、それすらも水がなければ冷やすことができない。
宇城市内では防災無線で「水は1人4リットルまで」という放送が繰り返し流れていた。八代市では、車で山側の地域の沢筋に入って、さまざまな容器を持ち込んで水を汲みに来ている方も見かけた。
被災地では、「水が貴重だから飲むのを控える」ことに加えて、不足しがちで衛生面や暑さも心配なトイレには行きたくないという心理がはたらきやすい。そうなると、「トイレに行きたくないから水分を摂らない」という、避難生活で懸念される水分摂取の抑制行動につながりやすい。水分摂取を減らした状態で、35℃超の炎天下に長時間さらされれば、熱中症や心筋梗塞、脳梗塞のリスクは爆発的に跳ね上がる。加えて、車内という空間で過ごせば、エコノミークラス症候群が起きやすいというリスクがある。極めて危険な状態に晒されてしまうのだ。


