食道腺がんの発症リスクにつながる

バレット食道は、将来的な食道腺がんリスクと関連する前がん状態と考えられています。GERDの患者さんすべてがバレット食道や食道腺がんに進展するわけではありませんが、長期間にわたる逆流症状では注意が必要で、週1回以上の逆流症状がある人では、症状がない人と比べて食道腺がんの発症リスクが約8倍高く、さらに20年以上続く重度の逆流症状がある場合には、リスクは約40倍以上にまで上昇する可能性が示されていますLagergren et al., 1999

こうしたGERDの増加の背景には、個人の生活習慣だけでなく、日本人の胃を取り巻く環境変化も関係しています。

かつて日本では胃がん対策としてピロリ菌感染への対応が重要視されてきましたが、除菌治療の普及により感染率は低下しました加藤元嗣ら,2017。その一方で、除菌後には胃酸分泌機能が回復し、逆流症状が出現しやすくなる可能性も指摘されていますMou et al., 2020。さらに、食生活の欧米化や肥満の増加など、現代の生活習慣の変化も重なり、GERDはより身近な疾患となっているといえます。

胸やけや呑酸といった症状は、単なる一時的な不快感ではなく、長期間続く場合には食道への負担が続いているサインである可能性があります。症状を我慢して放置するのではなく、早めに対策を講じることが重要なのです。

日常生活で取り組める対策

逆流性食道炎の改善や予防には、胃への圧迫や胃酸が逆流しやすい状況を減らすことが重要です。以下の対策の中から自分に合った方法を継続することが大切です。

・食後すぐに横にならない
食後は胃の内容物が増え、胃酸が逆流しやすい状態になります。少なくとも食後2〜3時間は横にならず、体を起こした姿勢を保つことが推奨されています。

リビングのソファで寝転んでスマホを使う男性
写真=iStock.com/west
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・就寝前の食事を避ける
特に夜遅い時間に夕食をとることが多い人では、食後すぐに就寝する習慣が逆流症状につながることがあります。

・就寝時は上半身を高くし、左側臥位を意識する
夜間の逆流症状がある場合、ベッドの頭側を10〜20cm程度高くすることや、左側を下にして寝る姿勢は、胃の形状上、胃酸が食道へ上がりにくくなるため有効とされています。

・前かがみ姿勢や腹部への圧迫を避ける
長時間のデスクワークによる猫背や、体を前屈させる姿勢は、腹部を圧迫し胃酸逆流を起こしやすくする可能性があります。また、腹部を強く締め付ける衣類にも注意が必要です。

・適正体重を維持する
腹部に脂肪が蓄積すると、腹圧が高まり、胃の内容物が食道側へ押し上げられやすくなるため、GERDとの関連が指摘されています。適正体重の維持や適度な運動習慣は、症状改善や再発予防に役立つことがわかっています。

・症状を悪化させる食品や食習慣を見直す
脂質の多い食事、アルコール、カフェイン、炭酸飲料、柑橘類などは、胃酸逆流症状を悪化させることがあります。ただし、影響する食品には個人差があるため、自身の症状との関連を確認しながら、摂取量やタイミングを調整することが大切です。

ただし、胸焼けなどの症状が続く場合には、医療機関を受診するようにしましょう。その他の病気が隠れている場合もありますし、逆流性食道炎であれば、胃酸分泌を抑制する薬などによって症状の改善や食道粘膜の治癒が期待でき、症状の長期化や合併症の予防につながります。