自衛することも大事だが…
最後に永島さんは、「でも、熱中症対策は、もう個人だけの問題ではないんです」と訴えた。
「アメリカのシカゴで、1995年にヒートウェーブっていう熱波がきたことがありました。そこには同じようなバックグランドの2つの地域があって、教会を核としてコミュニティがしっかりあったところは被害が少なくて、コミュニティが破綻していた地域はたくさん人が亡くなっていたんです。自分は生理学者なので、スポーツドリンクや体温計をつくるアプローチでこれまで熱中症について考えてきました。もちろん気象の解析も大事です。でも、これからは都市工学的に風の流れをつくるデザインを考えるとか、コミュニティづくりを考えるとか、もっと手前の段階でできることをやらないといけないのかなと思っています」
これだけ夏の暑さが恒常的になった今、社会の中でも熱中症対策への理解が広がっていくことが、鍵になってくる。
冒頭で、避暑地のイメージが強い長野県も年々暑さが増していることをぼやいた。ただ、私が住む標高800mほどのエリアは、それでも日が沈めば夜風が心地よいし、ご近所同士のつながりも強い。
近いうちに、熱中症という観点で住む場所を選ぶ時代がくるのかもしれない。
永島 計(ながしま・けい)
医師・博士(医学)。早稲田大学名誉教授、順天堂大学客員教授、バイタレート株式会社代表取締役。京都府立医科大学医学部卒業。同大学大学院修了後、国内外の大学・医療機関で臨床、教育、研究に従事した。専門は環境生理学、体温調節、運動生理学、熱中症予防。現在は、暑熱環境における人体反応の研究や、ウェアラブルセンサーを用いた体温モニタリング技術の開発に取り組んでいる。最新刊に『10代から知っておきたい熱中症の科学 酷暑からいのちを守る知恵と技術』(旬報社)がある。



