TPPでは、すべての品目をテーブルに載せなければならない。しかし、日本には、米国やオーストラリアに比して規模が小さく競争力の低い農業というセンシティブな分野がある。もちろん米国にしてもセンシティブな(重要な)品目がある。例えば、自動車産業がそれであり、また、砂糖など一部の農産品もである。ちなみに、既に結ばれている米国とオーストラリアとの二国間FTA(自由貿易協定)においては、砂糖と酪農製品が自由化の例外品目とされている。

実際、日本の交渉参加表明に当たっては、2013年2月に安倍首相とオバマ大統領との間で、(1)日本には一定の農産品,米国には一定の工業製品というように、両国ともに二国間貿易上のセンシティビティが存在することを認識しつつ、(2)両政府は,最終的な結果は交渉の中で決まっていくものであることから、(3)TPP交渉参加に際し、一方的に全ての関税を撤廃することをあらかじめ約束することを求められるものではないことを確認している。

ご懸念の多い農産物については、「譲れないところは1ミリも譲らない」とのスタンスで交渉に臨んでいる。日本の農業の基盤を危うくすることは絶対に受け入れられない。引き続き粘り強く交渉を行い、国益の最大化に全力を尽くしていく決意である。

西村康稔(にしむら・やすとし)
昭和37年、兵庫県明石市出身、神戸大学附属明石中学校、灘高、東京大学法学部卒業。通産省入省後、アメリカ・メリーランド大学院で国際政治学を学び卒業。平成11年通産省調査官を退官後、平成15年衆議院議員総選挙において初当選。20年外務大臣政務官。同年9月、47歳で自民党総裁選に立候補。以降、党改革実行本部副本部長、党政調副会長、党影の内閣 経済産業大臣、財務大臣等を歴任。24年内閣府副大臣に就任。著書に『新(ネオ)・ハイブリッド国家 日本への活路―3つの空洞化を越えて』(スターツ出版)、『生き残る企業・都市』(同文書院)、『リスクを取る人・取らない人』(PHP研究所)、『国家の生命線』(共著・PHP研究所)などがある。
(写真=宇佐美雅浩)
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