糖尿病をもつ人はうつ病リスクが約2〜3倍に
実際に、糖尿病のある方がストレスや抑うつを抱えている割合は少なくありません。世界的な調査では、糖尿病をもつ人はそうでない人に比べて、うつ病のリスクが約2〜3倍になることが示されており、アジア人で2型糖尿病のある人の約30%がうつ病を抱えていると報告されています。
うつ病になると、生活習慣の改善や自己管理が困難になり、結果として血糖コントロールが悪化するという悪循環に陥る可能性もあります。心のケアも、糖尿病治療において大切な柱のひとつなのです。
次に挙げるAさんやBさんのような例は決して珍しくありません。ストレスは血糖値や食生活に大きな影響を与えます。もし似たような状況に心当たりがあれば、早めに医療機関で相談し、心と体の両方をケアする一歩を踏み出してみてください。
Kさん 40代男性
営業職で忙しいKさんは、朝から車で移動が多く、食事は車内や外食ですませることがほとんど。仕事のストレスがたまると、帰宅後に菓子パンなど甘い物で気持ちを落ち着けるのが習慣でした。帰宅は夜9時過ぎ、深夜2時頃までスマホを見ながら過ごし、睡眠不足も続いていました。健康診断でヘモグロビンA1cは年々上がっていましたが受診せず、ついにヘモグロビンA1cが12%となり、発症から3年後、ようやく病院を訪れました。
Lさん 50代女性
調理師のBさんは、40代で糖尿病を発症。治療を始めたものの、忙しさや気持ちの余裕のなさから、薬の飲み忘れや通院中断を繰り返していました。減量のため入院したものの、思うように体重が減らず気持ちが折れ、「どうせ無理」とあきらめ、ストレスから無茶食いをするようになりました。減った体重もすぐ戻ってしまいました。
ストレスを和らげる5つの方法
糖尿病の寛解を目指すためには、ストレスとの上手な付き合いが欠かせません。ここでは、科学的に効果が確認されている5つの方法をご紹介します。
①1日1回マインドフルネス瞑想の時間を持つ
ゆっくりと深く呼吸することで、自律神経のバランスが整い、リラックスを司る副交感神経が優位になります。1日5分でも呼吸に集中する時間をつくることで、ストレス軽減や血糖値の安定に良い影響を与えることが知られています。私たちの病院の糖尿病教室でも取り入れています。
②体を動かす(運動によるストレス解消)
ウォーキングや軽い筋トレは、ストレスホルモン(コルチゾールなど)を低下させ、セロトニンやエンドルフィンといった“幸福ホルモン”を増やすことがわかっています。
運動は心身両面に効果のある「薬」なのです。
③誰かと話す・つながる
社会的つながりは、ストレスを和らげる重要な要素です。孤独は慢性的ストレスやうつ状態を引き起こしやすく、糖尿病の自己管理にも悪影響を及ぼします。人とつながることは、精神的な支えとなり、前向きな行動変容を促します。
私たちの病院では、糖尿病のある人同士が集まって食事会をしたり、旅行に一緒に行ったり、また、糖尿病のある人が集まって交流できる「糖尿病カフェ」を開いたりしています(新型コロナで一旦休止中)。
④「自分を責めない」思考のクセをつける(セルフ・コンパッション)
「また失敗した」「自分はダメだ」などと責める思考は、ストレスやうつを悪化させます。
自己批判ではなく、自分にやさしく接する「セルフ・コンパッション(自己への思いやり)」の態度を持つことが、精神的安定と継続的な生活習慣改善に役立ちます。
⑤十分な睡眠をとる
睡眠不足はストレス耐性を下げ、インスリン抵抗性や食欲の乱れを引き起こします。質のよい睡眠は、精神的な安定だけでなく、ホルモンバランスや血糖コントロールの維持にも重要な役割を果たします。
成人であれば、1日7時間以上の睡眠が推奨されており、就寝前のスマートフォンの使用を控えることなども有効です。また、睡眠不足の原因として、睡眠時無呼吸症候群(いびき・無呼吸)やレストレスレッグス症候群(脚のムズムズ)などの病気が隠れている場合もあります。気になる症状があれば、医師に相談してください。


