日本初の“VIPルーム”は東京ドーム

かつて後楽園球場には、天皇陛下や球団オーナーを迎えるための貴賓室こそ備えてあったものの、ビジネス・ユーザー向けのVIPルームは存在しなかった。

そもそもスタジアム内にラグジュアリーな個室を設けるというビジネスモデルの原点は、1965年にアメリカ・テキサス州に誕生した世界初の多目的ドーム球場アストロドームだったとされる。当時のオーナー、ロイ・ホフハインツが球場内に全53室のスカイボックスを設置したことが、スポーツを最高峰の社交場へと変貌させる記念碑となった。同ドームは2008年に閉鎖されたが、14年には歴史登録財に登録されている。

日本においてこのアストロドームのDNAを取り入れたのが、1988年開業の東京ドームだ。当時の「スイート倶楽部」は、それまでの皇族や国賓のための「貴賓室」という概念を覆し、「接待室」を日本のスタジアムとして初めて導入したとされる。

東京ドームの「THE SUITE TOKYO」ではない、それ以外の VIPルームにあるウェルカムホール
筆者撮影
東京ドームの「THE SUITE TOKYO」ではない、それ以外のVIPルームにあるウェルカムホール

なお、東京ドームには1試合66万円のROYAL PARTY SUITE THE FLIGHTや、30万円台のDAZN LOUNGEなど、シーズンシート契約者が1試合単位で利用できるVIP席群も並ぶ。ただし、年間の法人契約でしか利用できず、専用ゲートと東京ドームホテルの専属サービスまで備える最高峰は、THE SUITE TOKYOだけである。

「一日中楽しめるメジャー流のボールパーク」を日本で初めて具現化したのは、2005年に新規参入した東北楽天ゴールデンイーグルスだろう。

同球団の初代GMマーティ・キーナート氏(故人)は、松井秀喜さんのMLB行きを予言したジャーナリストでもあり、多様な席の提供にとどまらず、「美味しい食事と心地よい空間で、大切な人と最高の時間を過ごす」というスポーツホスピタリティの価値観そのもの、ボールパーク思想の本質を、古く泥臭かった地方球場に持ち込んだ。

「ホスピタリティの高い球場」が続々誕生

以降、2009年には広島にMAZDA Zoom-Zoomスタジアムが完成、楽天のボールパーク思想が受け継がれ、券種に関係なくスタジアムを一周できるコンコースや、寝そべって観戦できる「ねそべりあ」、バーベキュー可能な「エバラ黄金の味びっくりテラス」を備えた。

こうした構想は、2012年にソフトバンク保有となった福岡ドーム、2016年からDeNA保有の横浜スタジアムに受け継がれ、2023年竣工のエスコンフィールド北海道で大きく結実を見るようになった。

東京ドームもこうした潮流に乗ったのか、2022年3月には過去最大と呼ばれる改修が行われ、メインスクリーンは従来の4.4倍となる国内最大級のフルカラーLEDビジョンを設置している。