金融資産価格の決定要因に関する公の情報を「利用可能な情報」として利用して価格が効率的に決定される状況は、「準強の意味での」市場の効率性と呼ばれる。もしチャーティストが「準強の意味での」市場の効率性を成立させる公の情報を知っていても、チャートに固執して、過去の情報のみに依拠して行動し、彼らの行動が価格に影響するならば、「準強の意味での」市場の効率性は成立しない。
このように、ファーマ氏が想定する効率的市場においては、市場参加者はすべて「利用可能な情報」を利用して、合理的に将来価格を予想し、利益を十分に追求する経済合理性を持ち、市場参加者の投資行動を規制する制度的制約や市場の摩擦もないことが前提となっている。その前提の下で、市場参加者はその新しい情報に対して完全に反応し、その結果、価格はその新しい情報を即座に反映することになるため価格の変動はランダムウオークとなり、予測不可能となるはずである。
しかしながら、これらの前提に対する現実的な批判は妥当であろう。制度的制約や市場の摩擦のみならず、行動ファイナンスで想定されているように、市場参加者はけっして十分に情報を入手しても十分に合理的に行動しないかもしれない。このような行動バイアスに加えて、情報が不完全であり、市場参加者の間で情報の非対称性があることから、情報優位と思われる市場参加者の行動に情報劣位にある市場参加者が追随するかもしれない。このように現実的に金融資産市場を想定すると、シラー氏が実証分析によって明らかにした資産バブルが発生することも考えられる。
(図版作成=平良 徹)