「公正」を求める韓国国民の怒り

なぜ、サッカー代表の敗退ひとつにここまでの怒りが向けられるのか。その背景には、韓国社会が抱える根深い構造的問題がある。

韓国は、厳しい受験競争と就職競争を勝ち抜いて社会に出るのが当たり前の社会だ。「ルール通りに努力すれば報われる」という前提こそが、韓国国民に共通する意欲の源である。

だからこそ、そのルールを破るかのように縁故や学閥による贔屓が生じたとき、人々は激しい怒りを覚える。怒りの火種は、チームが敗退したという実力問題よりもむしろ、人脈で不正に決まったとされる監督のせいで敗れた、という不公正感にある。

若い世代の反応は、とりわけ厳しい。BBCの取材に応じた人物は、競争社会を生き抜く若者たちが不公平さに対し、ますます敏感になっていると指摘。その上で、こう語った。

「本来どんな場面よりも公平であるべきスポーツでさえ、運営者たちがその原則を無視するのを私たちは見てきた。もはや人々はそれを受け入れることができない」

NBCニュースによると、李在明大統領はW杯への参加にも「多額の国民の税金と国家支援リソース」が投じられていると認め、「このようなことが二度と起きないよう、スポーツ行政の改革を迅速に進める」と宣言した。

大統領自らがW杯敗退に怒りを示すという異例の事態に至ったのは、このような国民の激しい怒りがあったからに他ならない。

森保ジャパンとの落差

韓国サッカーが代表監督の交代で揺れるなか、ファンの間で隣国・日本への羨望が広がっている。

Kリーグは1983年にアジア初のプロリーグとして発足し、1993年創設のJリーグに約10年先行した。かつてはアジアの盟主を自任していた韓国だが、BBCは、いまや代表チームの実力差は完全に逆転していると分析する。

今年3月、日本は敵地ウェンブリーでイングランドを1-0で破り、アジア勢として初めてイングランドに勝利。同時期に韓国はコートジボワールに0-4で大敗している。

あるファンはSNSで、「日本には全員が同じ方向を向く100年のビジョンがある。韓国はサッカーを何も知らない一人の気まぐれで監督が次々と替わるだけだ」と嘆いた。

スポーツ評論家のチェ・ドンホ氏はBBCに対し、「日本代表はチームが何を目指すべきかという問いに明確な答えを見つけた」と分析。一方で「韓国は4年ごとにゼロからやり直している」と指摘している。実際、2002年以降だけでも韓国代表の監督は10人以上が交代し、そのたびに戦術がリセットされてきた。

長期ビジョンの有無は、敗戦後の振る舞いにも表れる。日本を率いる森保一監督は、今大会でブラジルに敗れた後も冷静さを崩さなかった。

試合後の取材に、「ブラジルとの差は縮まっている」と前を向きつつ、「タイトルに導けなかった自分の力不足を選手に謝った」と語っている。冷静かつ謙虚な受け止めは、グループステージ敗退後に怒りが噴き出し混乱に陥った韓国とは対照的だった。