かつて中国に頼りきりだった日本の水産業
ニューヨーク・タイムズは、「中国が世界的な経済大国として台頭するにつれ、14億人の市民が国際商品の重要な消費者となっている」と言及。副見出しでは、「北京は、台湾防衛への明らかな意欲がある日本を罰するために、ありふれた軟体動物(ホタテ)の禁止措置を利用している」とも踏み込んだ。
だが、この禁輸が想定外の代償を生んでいたことが、直近の海外報道から明らかになっている。
2023年時点で日本のホタテ産業は、たしかに中国に依存していた。
ホタテは日本の水産物輸出の約20%、農林水産物・食品輸出全体の6%超を占める稼ぎ頭だと、韓国シンクタンク発オンライン誌のアサン・フォーラムは伝える。農林水産省「農林水産物輸出入概況」によれば、2022年のホタテの輸出額は約910億円。禁輸発動前の数年間を見れば、ホタテ輸出実績の実に50〜60%が中国向けだった。
中国は日本産ホタテを世界に届ける「加工ハブ」でもあった。アメリカなど主要消費国は衛生基準上、殻付きなど未加工の貝類の輸入を厳しく制限している。日本から直接は売りにくい。
そこで日本は、殻付きのホタテをいったん中国へまとめて輸出し、現地で殻むき等の加工(「ウェット加工」)を施したうえで米国や欧州へ再輸出するサプライチェーンを築き上げてきた。米連邦調査機関の国際貿易委員会のデータでは、対中国の水産物輸出額の54%をホタテが占める。このほか、スケトウダラなども加工目的で中国に送られている。
明らかになった「ホタテ禁輸」の真の敗者
その中国が、2023年8月、福島の処理水放出を受けて突然扉を閉ざした。打撃はすさまじかった。米水産業界専門メディアのシーフードソースによれば、2023年度の対中水産物輸出額は前年度の746億円から320億円へ、57%の急落を見せている。日本の水産物輸出全体も17%減の2185億円に沈んだ。
禁輸が日本の水産業に与えた影響は甚大だ。だが、最も大きな経済的打撃を受けたのは、実は日本ではない。見落とされがちだが、特に割を食ったのは中国の水産加工業者である。
禁輸前、中国(香港含む)は日本の水産物輸出の42%を買い付けていた。だが、決して日本が中国に一方的に依存していたわけではない。中国の水産加工業者にとって、加工を委託してくれる日本企業はなくてはならない顧客だったと、シーフードソースは指摘する。
とりわけ大きかったのが、対米輸出向けのホタテ加工ビジネスだ。日本国内の人手不足を背景に、中国の加工業者は日本から輸入したホタテの殻をむいて加工し、年間約1億ドル(約162億円。6月22日現在のレート、1ドル161.97円で換算、以下同)規模でアメリカ市場へ再輸出していた。

