中国なしで輸出額が伸びた
国内の消費拡大に加え、輸出先の多角化戦略でも日本は活路を開いた。
禁輸後の11カ月間(2023年8月〜2024年6月)、日本産ホタテの世界全体への輸出総額は前年同期比45.3%減の3億2530万ドル(約521億300万円)に落ち込んだ。
ところが中国を除くと、まったく別の姿が見えてくる。アサン・フォーラムによれば、中国以外への輸出額は2億9050万ドル(約465億2900万円)から3億1710万ドル(約507億9000万円)へ、むしろ9.1%伸びていた。アメリカが90.8%増、タイが90.1%増。ベトナムにいたっては420%増という急伸ぶりだ。
2024年通年のデータからも、この変化が一過性でないことが読み取れる。経産省所管のジェトロ(日本貿易振興機構)によると、ホタテ輸出先の上位5カ国・地域はアメリカ(191億円)、台湾(121億円)、ベトナム(106億円)、韓国(78億円)、香港(51億円)。かつて最大の買い手だった中国は、上位のどこにも見当たらない。
なかでも際立つのは、アメリカ市場での躍進だ。2024年、ホタテはアメリカ向け農林水産物・食品輸出でアルコール飲料、ブリに次ぐ第3位に浮上した。
アメリカとの国境に近いメキシコ・エンセナダでは、既存のコールドチェーン(低温物流網)を活かした対米輸送網の構築が進む。ラスベガスやロサンゼルスへ24時間以内にホタテを届けられる体制が整いつつある。
さらに、ジェトロの関連団体JFOODOはアメリカのCNNを通じ、日本産ホタテのプロモーションを展開。シーフードソースが取りあげるように、農林水産省は2024年1月、ブラジル・サンパウロで試食イベントを開催。日本からブラジルへの初の直接ホタテ輸出が実現した。
漁夫の利を得たベトナム
水産物輸出の多角化戦略は、政府も積極的に後押ししている。
2024年1月、ジェトロは経済産業省・農林水産省・在日米国大使館と合同でベトナムの加工施設を視察。参加した日本企業12社のうち複数社がベトナム企業との事業契約を結んだと、アサン・フォーラムは報じている。
こうしてベトナムは、中国に代わる加工拠点として、最大の受け皿となった。
海事専門ニュースポータルのベアード・マリタイムによると、ベトナムの2025年のホタテ輸出総額は約6600万ドル(約110億円)。前年の4400万ドル(約70億円)から約49%の伸びだ。2026年に入っても衰えるどころかさらに加速し、最初の2カ月だけで1810万ドル(約29億円)、前年同期比166%増を記録している。
2025年の日本向け輸出額は1400万ドル(約22億円)、前年比173%増。日本は依然として世界最大級のホタテ供給国だが、中国向けの出荷を絞り、他市場へ振り向けている。その加工の中継地として、ベトナムが急速に台頭した。
ベトナム水産物輸出生産者協会(VASEP)も、加工・再輸出を軸に、ベトナムがグローバルなバリューチェーンにより深く組み込まれつつあると分析する。かつて日本のホタテの加工業で栄えた中国は、一気にその座をベトナムに奪われた。

