輸出額が“中国抜き・多角化”で急回復

中国は2025年半ばに禁輸を部分的に緩和したものの、農水省輸出政策企画課の中杉和義課長補佐は英ロイター通信に対し、「緩和後も、中国向けの日本産水産物輸出はあまり回復していない」と指摘する。禁輸が長引くうちに、日本の水産業者はすでに中国以外へ販路を切り替えており、中国市場への期待はすっかり薄れている。

脱中国の変化を最も鮮やかに見て取れるのが、ホタテである。ディプロマットは、2025年のホタテ輸出額が前年比30.4%増の約906億円にまで急回復したと論じる。中国本土・香港の規制で大きく落ち込んでいた品目が、輸出先の多角化でここまで盛り返したのだ。2022年に記録した910億円まであと4億円差のところまで迫っており、中国市場抜きでも日本のホタテ業界が成立することを、確かに裏づけた。

韓国市場でも、販路は大きく広がっている。韓国海洋水産部によると、2025年の日本産水産物輸入額は約383億円(前年比27.2%増)。2011年の福島第一原発事故後、日本産水産物への警戒感が強まった韓国であったが、現在では事故前の2010年の水準すら上回っている。

日本だけではない禁輸の“被害者国”

中国が経済的威圧を仕掛けて裏目に出たのは、ホタテが初めてではない。

中国の貿易相手国となっている諸外国に目を向ければ、台湾産パイナップルも、豪州産ワインもそうだった。日本のみならず、中国は外交上の不満を禁輸という形で各国に繰り返し突きつけてきた。

パイナップル
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短期的には、確実に相手国に打撃を与える。しかしその間に、標的にされた国はサプライチェーンを根底から組み替え、中国は握っていたはずの切り札を二度と使えなくなる。

この手法の原型をたどれば、2010年にさかのぼる。尖閣諸島沖で中国漁船が海上保安庁の船舶2隻に衝突した事件を機に、中国はハイテク製品に不可欠なレアアース(希土類)の対日輸出を禁じた。

米シンクタンクの戦略国際問題研究所(CSIS)は、日本と中国が外交関係を回復したのは同年11月末だったと振り返る。だが、両国はなおも火種を抱えていた。2012年、それまで日本人の私有地であった尖閣諸島を日本政府が購入し国有化すると、中国は再び態度を硬化させ、日中が対話再開の合意にこぎつけるまで2年以上を要した。