中国語を話すだけで標的にされる
一方、中国人旅行者たちは日本の代わりに、韓国へも足を延ばしている。だがその韓国でも、中国語を話す人々が危険にさらされつつあるという。
ニュースメディアのネクスト・シャークが報じたところでは、韓国で30代の男が昨年4月、バス車内で中国語を話していた中国人女性2人を相手に「声が大きすぎる」と因縁をつけ、尾行したうえ暴行を加えた。
わずか5日後、同じ男が今度はソウル麻浦区のレストラン前で待ち伏せし、中国人だと考えて相手を襲ったという。焼酎瓶で男性の頭を殴りつけたが、実際には被害者は台湾人カップルだった。中国語を話していたことで誤解されたとみられる。
8月、男には懲役10カ月の実刑判決が下された。裁判所は、「長年にわたる敵意から中国国籍者を標的にした憎悪犯罪」と認定している。
こうした暴力を前に、一部の台湾人旅行者たちは自衛に乗り出している。
台湾国旗とともに韓国語と英語で「私は台湾人です」と記したバッジを胸元に着け、中国人と間違えられないようにしているという。
ネクスト・シャークによれば、このバッジはSNSで大きな話題になった。バッジを着けた途端、店員の態度が目に見えて変わったとの声もあるという。
背景にあるのは、韓国社会に深く根を張った反中感情だ。豪シンクタンクのローウィー研究所が指摘するように、韓国各地の公共の場で反中デモが相次いでいる。
観光地の偏りで摩擦が生まれた
中国系移民が多く集まる地区では、中国共産党が社会に浸透しつつあると訴えたり、中国人移民を非難したりする極右団体が定期的にデモ行進を繰り広げている。道路の交差点には「中国人観光客に国を乗っ取られる」と訴える横断幕も見られる。ソウルのあるカフェにいたっては、「中国人客お断り」を公然と掲げている。
国籍を理由に外国人を一律排除する動きには議論の余地がありそうだが、特定の国から多くの観光客が押し寄せる韓国にあって、市民の心情は決して芳しくないようだ。
サウスチャイナ・モーニングポストによると、韓国ドラマのロケ地となった韓国・済州島には、中国人観光客が殺到。
2024年に島を訪れた190万人のうち、実に72.6%を占めるに至った。観光客の急激な増加は、ただでさえオーバーツーリズムの問題を引き起こす。そのうえ訪問元に偏りがあるとなれば、地元との摩擦もより起きやすくなりかねない。
中国政府の号令ひとつで日本訪問を避け、大挙して他の国々へ向かうようになった中国人観光客たち。しかし、人気旅行先上位のうちタイでは危険な事件に巻き込まれ、韓国では望ましくない海外客として避けられる風潮がある。
日本をターゲットにした渡航自粛要請の結果、京都が歩きやすくなり風情を取り戻したなど、国内では良いニュースも聞かれる。
こうして日本国内がゆとりを取り戻した一方で、ほかのアジアの国々との摩擦を生む結果になった、訪日自粛勧告。習近平政権にとって、大きな誤算だったと言えそうだ。



