現職警察官の犯罪に巻き込まれる
警官を装った、拉致事件。だが、実際の警官ならば安全とは限らない。
カンボジア国境に近いタイ東部サケーオ県では今年5月、現職の警察官4人が中国人5人を拉致する事件が報じられた。市民を犯罪から守るはずの警察官が、みずから加害者に回った形だ。
バンコク・ポストは、事件の経緯をこう報じている。容疑者は警察官4人と民間人1人の計5人。深夜、タイ人ドライバーの車で移動していた中国人5人を、「不法入国」を口実に拘束した。
本来の摘発であれば、警官は容疑者を警察署に連行するところだ。だが、犯行グループは被害者を、ワンソンブーン郡の森林地帯にある人里離れた一軒家に連れ込んだ。その後、1人あたり30万バーツ(約148万円)を支払うよう要求したとされる。タイ移民局が捜査に乗り出し、容疑者5人は逮捕・訴追されている。
被害者らは手錠をかけられたまま、金銭を要求され、応じなければ暴力を振るうと脅迫された。うち2人は実際に、手付金として各2000ドル(約32万4000円。6月22日現在のレート、1ドル161.97円で換算)相当の暗号資産を送金させられている。警察に助けを求めようにも、その警察が犯人だった。
怯えて旅行を楽しめない本末転倒
こうした事件が続くにつれ、タイを訪れる中国人旅行者は深い恐怖に包まれている。
バンコクの王宮付近。AFPの取材に応じた浙江省出身の25歳中国人男性観光客は、「ここにいる間は、中国語を話す人とは、あまり会話を交わさないようにしている」と語った。
ミャンマー国境付近には中国系犯罪組織が運営する巨大な詐欺センターが存在し、拉致され劣悪な環境で詐欺行為に加担させられることがある。詐欺組織に拉致されることを恐れ、同じ中国人であっても、タイで出会った見知らぬ相手との接触は避けているのだという。
王宮で中国語ガイドを務めるブリ・チン氏も、観光客の変化を肌で感じていた。AFPの取材で、チン氏は、「中国語ガイドが必要かと尋ねると、怯えたような反応をされる。見知らぬ人とは話したくないようだ」と語っている。恐怖のあまり旅行先を楽しめないという、本末転倒の状態だ。
著名人も、例外ではなかった。CNNの報道によれば、香港の歌手陳奕迅(イーソン・チャン)氏や中国のコメディアン趙本山(チャオ・ベンシャン)氏は、安全上の懸念を理由に、バンコク公演を相次いで中止している。

