華僑が伝承する「3つの教え」

では、なぜ華僑の教育はそこまで強いのでしょうか。

私は、その理由は三つあると考えています。

一つ目は、お金を「個人の持ち物」ではなく、「家族で守り、育て、次世代へ渡すもの」と考えていることです。

日本では、子どもにお金の話をすることを避ける家庭が少なくありません。けれども華僑の家庭では、商売の話、投資の話、事業の失敗談、信用の大切さまで、子どもが小さい頃から自然に耳にします。そのため、子どもは早い段階で「お金は怖いもの」ではなく、「正しく扱えば人生を守る力になるもの」と理解していきます。

二つ目は、働いて稼ぐだけでなく、収入の仕組みを作る発想を教えることです。

華僑の家庭では、「いい会社に入ること」だけが成功ではありません。商品を売る、店を持つ、人を雇う、不動産を持つ、投資する、信用を積み上げる、家族や仲間と事業を広げる。そうした複数の収入の形を、子どもの頃から身近なものとして学んでいきます。これは単なるお金の知識ではありません。人生の選択肢を増やす教育です。

三つ目は、信用とネットワークを資産として考えることです。

華僑の強さは、個人の能力だけではありません。家族、親族、同郷の仲間、世界中に広がる人脈を大切にし、信用を長い時間をかけて積み上げます。だからこそ、異国の地でも商売を広げ、現地に根を張り、やがて財閥や巨大企業を築くことができるのです。

【図表2】華僑が伝承する「3つの教え」
記事の内容をもとに編集部作成

お金の話は避けてはいけない

実際、東南アジアには華僑系の財閥や大企業が数多く存在し、金融、不動産、小売、物流、通信、製造業など、国の経済を支える分野で大きな影響力を持っています。

さらに世界を見ても、半導体、IT、AI、インターネットサービスなどの分野で、華僑系の創業者や経営者が重要な役割を果たしています。つまり華僑の教えとは、単なる節約術や投資ノウハウではありません。

「富を一代で終わらせず、世代を超えて育てるための家庭教育」なのです。

ここに、日本の家庭教育との大きな違いがあります。

日本では、お金の話を避けることで子どもを守ろうとしてきました。しかし華僑の家庭では、お金の話を隠さずに伝えることで、子どもを守ってきたのです。この差は、10年後、20年後、30年後に、収入、資産、働き方、人生の自由度として大きく表れます。

先ほども触れた経営者も含め、世界の「トップ1%」の富裕層には華僑が多く含まれます。彼らの本質的かつ実用的なお金の教育から、私たちは多くのことを学ぶことができるのです。