年々上がる「最高評価」のハードル
IIHSは安全基準のハードルを年々引き上げている。同協会の発表によれば、2026年版で最高評価「トップセーフティピック+」を勝ち取るには、衝突安全と事故予防の計6項目すべてで高い成績を収めなければならない。前面・側面衝突の3項目とヘッドライト評価、歩行者衝突回避、そして車対車前面衝突回避だ。さらには、事故予防装置も標準装備として提供されていることが求められる。
最大の追加要件となったのが「車対車前面衝突回避テスト」である。2022年に廃止された旧テストに代わる刷新版が昨年から運用を開始し、今年から最高評価獲得に欠かせない必須要件として加わった。最高時速43マイル(時速約70キロ)という高速域で、前方の乗用車・バイク・セミトレーラーを自動で検知し、減速・停止して追突を回避できるかが問われる。クルマの安全性をめぐる基準は、ますます先進的な領域へと達しつつある。
要約するならば、衝突時の頑健さ、事故予防の精度、そして全グレードでの標準装備化、その三拍子が揃って初めて最高評価を得ることができる評価制度だ。
マツダはこの思想を地で行く。
マツダUSAは今年3月、IIHSの「トップセーフティピック+」を8モデルで受賞したと発表。表彰された2026年型のマツダ3セダン、マツダ3ハッチバック、CX-30、CX-50、CX-70、CX-70 PHEV、CX-90、CX-90 PHEVすべてで、ブラインドスポット・モニタリング(BSM、死角検知)、後方クロストラフィック警告(RCTA)、スマートブレーキサポート(自動緊急ブレーキ)、車線逸脱警報(LDW)の4種を標準で備える。エントリーモデルのマツダ3セダン〔2万4550ドル(約393万円、配送・取扱手数料別)〕でさえ、例外ではない。
マツダは安全装備を「上級グレード限定」の付加価値として温存せず、ラインナップの隅々にまで浸透させている。
マツダは1位を守り続けられるのか
対照的に、残念ながら上位を逃したのがスバルだ。一部モデルでBSWとRCTWを標準装備としていない点で評価を落とし、9位に沈んだ。29ブランド中で比較的高い位置は維持したものの、CRのフィッシャー氏は、「安全性はオプション扱いであってはならない」と明言する。
テスト車両のうちベスト判定の割合が50%を超えたのは、マツダを始めとする上位5ブランドのみとなった。
もっとも、マツダがこの王座をいつまでも守れるとは限らない。マツダ自身が、これまでの勝因の逆をゆく一手を、新型車で打とうとしているのだ。
米自動車ニュースサイトのモーター1の報道によれば、マツダは10年以上採用し続けてきたコマンダーノブ、つまりセンターコンソールの回転式操作ダイヤルを廃止する。
コマンダーノブはスマホ連携規格のアンドロイド・オート(Android Auto)やアップル・カープレイ(Apple CarPlay)が登場するより前に設計されたもので、のちにこれらタッチ操作前提のシステムを追加した際に統合上の課題が生じていた。
車載技術・ヒューマン・マシン・インターフェース担当プロジェクトマネージャーのマシュー・バルブエナ氏は「350以上のアプリを単一のノブで操作することは非常に困難だった」とも語っており、移行の背景には技術的な事情があった。

