南北朝時代になかった中国兵法書の種類
『太平記』には軍記物の特性上、合戦を主材とする章段が多い。その合戦譚においては、戦術・戦略面への言及もしばしばなされる。軍議では『六韜』『三略』をはじめとする中国の兵法書を引用している。けれども、実際の軍議で、本当に兵法書が引用されたのか、武士たちが中国の兵法書を読んでいたのか、疑問なしとしない。
実は『太平記』の特徴の1つは、膨大な漢籍(中国の書物)の引用である。中国古典を延々と引用して、話の本筋から脱線することも珍しくない。『太平記』作者が自身の知識を基に軍議の場面を脚色した可能性があり、当時の武士が漢籍を縦横に引用して、中国の兵法に基づいて軍議を行っていたことの証拠にはならない。
南北朝時代の武将で、当代一級の文化人でもあった今川了俊は『了俊大草紙』において、「兵法事。今、天下に人の用いるところの兵書は、四十二ヶ条なり…(中略)…兵法の事は皆真言にて左右なく行いがたき事なり」と記している。
ここから先は無料会員限定です。
無料会員登録で今すぐ全文が読めます。
プレジデントオンライン無料会員の4つの特典
- 30秒で世の中の話題と動きがチェックできる限定メルマガ配信
- 約5万本の無料会員記事が閲覧可能
- 記事を印刷して資料やアーカイブとして利用可能
- 記事をブックマーク可能
